コロナウイルスパンデミックが始まったばかりの春、得体のしれないウイルスに、医師の中にも強い警戒心恐怖心を抱き、不安を処理しきれず精神科に訪れる先生も少なくありませんでした。その時、ある先生から聞いた話が忘れられません。

コロナに感染するのがこわいので、外来診療したくありません。

その先生はそう上司に申し出ました。するとその上司は医者のくせに、

ふざけるな。おまえ医者だろ。

と言ったそうです。

ふざけるな?私はびっくりしました。ふざけてんのはおまえだろう。未知のウイルス、得体の知れないウイルスに、恐怖心を感じるのは医師なら当然だろうが。素人と違い医学教育を受けているのである。専門が違っても、肺炎、特に間質性肺炎がどれほど怖いか、知らないはずがないのだ。

知っているだけに強い不安や恐怖を感じるのはよく知れた現象だろう。知らぬが仏を知らないのか。

それなのに、自分の部下に向かって、ふざけるな、とか、医者のくせに、などと言うのはハラスメントを超え暴力だと私は思い、院長に直訴しました。そして被害に遭った医師にしっかり謝罪をして貰いました。