好きなんて、思ってないくせに。
可愛いなんて、思ってないくせに。
これ以上、近寄らないで。
「ごめん、待った?」
息を切らして私に近寄ってくる貴方の顔を見て、思わずほっとする。
いつだって貴方は遅れてくる。
それにわたしはいつだって、不安になる。
ああ、もう来てくれないのかもしれない。
きっと、もう二度と会えないのかもしれない。
そんなの、恋愛でもなんでもないのに。
「待ってないよ。お疲れ様。」
「よかったー。お疲れ。何食べたい?」
薄く笑って、貴方はさっさと歩きだす。
まだ現状に心を震わせてる私はその切り替えの速さに後れをとる。
その瞬間、悲しくなる。
いつも。
いつも、この瞬間。
ほっとして
嬉しくて
悲しくなる。
もう私の精神は崩壊しているのかもしれない。
だって、もう一本の安定した糸を張ることすらできない。
貴方の少しだけ後ろを、いつもより早い足取りでついていく。
貴方は気がつかない。
少しでも貴方に好かれたくて、古臭いスタイルを少しでも綺麗に見せたくて、
高めのヒールを履いていることに。
「中華かイタリアンがいいな」
「あ、俺も今イタリアンがいいなーって思ってた。一緒だ」
また、薄く笑う。
その顔が好き。
何にも執着していないかのように、薄く、ただ、目尻に皺を寄せて。
ねえ、貴方は私のこと、少しでも好きだと思ってくれてる?
私のこと、可愛いって思ってくれてるの?
答えはわかってる。
わたしは十分わかっている問題に、ずっとずっと向かい合って、ただペンを握りしめている。
真っ白な回答用紙を、睨みつけている。
わかってるのに。
その答えは、正解なのに。
私はよく飲んだ。
何杯も、何杯も飲んだ。
酔えば褒めてくれる貴方がいることを知っているから。
酒の力を借りてしか好きって言えない男なんてくそくらえ。
いつか私にそう言い放ったのはだれだっただろう。
思い出せない。
喉の奥がきゅ、ってなる。
いつか、この恋を捨てたいと思う時がくるんだろうか。
私が捨てられる方がきっと先だろう。
思わず笑みがこぼれる。
彼は自分の話に微笑まれただけだと思って、そのまま話を続けた。
その笑みが自嘲的であったかどうかなんてどうでもいいのだ。
傷つくために、幸せを感じていたわけではないのに。
心臓の奥の奥が、また、ぎゅっとなる。
痛い。
痛いよ。
