モモ:児童文学の最高峰 | みとのや先生日誌:元帰国生だから言える事

みとのや先生日誌:元帰国生だから言える事

アメリカオレゴン州、ワシントン州にある学習塾巣鴨アドバンススクール(www.sugamoadvance.com)で日々子供達と奮闘中です。

こんにちは。

オレゴン州ポートランドは相変わらず暑い日々が続いています・・

なんだか熱で溶けていくチョコレートの気持ちが分かります(笑)

湿気がないためにどれだけ暑くても汗がでないように見えますが

ただ蒸発してしまっているだけなので

皆さん水分補給だけはこまめにとりましょう。



さて、夏休みといえば、夏休みの宿題。

そして、夏休みの宿題といえば、読書感想文。

そんなわけで、今日は本の紹介です。
(すいません、無理やりなつなげかたですね)

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)/ミヒャエル・エンデ
¥1,785
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うちの校舎にも置いてあり、子ども達からは人気のある作品の一つとなっています。

ただ、ページ数も多いため、その分厚さに拒否する生徒も多いのが現状です。

(文庫版もでているようです)


この児童文学、子供用と思ってあなどるなかれ。

現代社会の風刺なども入っており、大人でも楽しめる内容です。

少し引用を紹介します。


著者が最近のおもちゃについての意見を述べています。

(高価なおもちゃで)とりわけ困ることは

こういうものは細かなところまで至れり尽くせりに完成されているため

子どもが自分で空想を働かせる余地が全く無いことです。

ですから子ども達は何時間もじっと座ったきり

ガタガタ、ギーギー、ブンブンとせわしなく動き回るおもちゃのとりこになって

それでいて本当は退屈して、眺めてばかります・・・

けれど頭のほうは空っぽで、ちっとも働いていないのです。



この本が出版されたのが1976年。

まさに著者が言っていた事が、各家庭において現実となってきているのではないでしょうか。

おもちゃ(テレビゲームも含む)が高度になればなるほど子ども達の想像力を働かせる余地がなくなり

彼らの頭が空っぽになってしまうのです。


次の引用も少々長くなりますが、大変示唆に富んでいます。

ニコラという大人が、子どものモモに語りかけます。


モモ、ごらんのとおり、俺はまたちっと飲みすぎたよ。

今じゃこれもしょっちゅうなんだ。

そうしないと、あそこでやってることに

我慢しきれなくなるのさ。

まっとうな左官屋の良心に反するような仕事をやってるんだ。

モルタルにやたらと砂を入れすぎるのさ、わかるかい?

これだと4年、5年はもつけど

そのうちに咳をしただけでも落ちるようになっちゃうんだ。

インチキ工事さ、卑劣きわまるインチキ工事さ!

ところがそれだってまだましなほうだ。

一番ひどいのは、俺達があそこで建てている家だ。

あんなものは家じゃない、ありゃ・・死人用の穴倉だ!

思っただけでも胸がむかむかするよ!

だがな、そんなこと俺に何の関係がある?

俺は金をもらう、それでけっこうさ。

そうさ、時代が変わったんだ。

昔は今と違って、俺は人に見せられるほどのものを建てて

俺の仕事を誇りに思ったもんだ。

だが今じゃ・・・。


これも、多くの現代人が抱えているジレンマではないでしょうか。

何が正しくて何が正しくないのか

分かっているけれども、自分をだましだまし日々を過ごす。

著者が30年以上前に指摘していたことが

ここ最近あらわになってきています。



そんなわけで、引用が長くなってしまいましたが

このモモという作品、非常に考えさせられます。

是非手にとって読んで見てください。