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ぶらんこ乗り

「手をにぎろう!」


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ふたりのぶらんこのりは生まれてからずっと空中でくらしてきた。べんきょうするのもごはんも、ねむるのもずっとぶらんこにのったまま。ふたりのけっこんしきももちろんテントのてっぺんでおこなわれた。しきのおわりに、ふたりはタイミングをあわせて、とてもやさしいキスをいちどした。

さかさになったおくさんはりょうりがじょうず。だんなさんはサーカスがはじまるまでしんぶんをよんだりトランプうらないをしたりしてじかんをつぶしている。あるあらしのよるに、さかさにぶらさがったおくさんはしんぱいそうにゆかのほうをみあげ、

「きょうはどうぶつがさわぎますねえ」

「きみ、ねつかれないかね」

だんなさんのほうも、てんじょうのねずみをみあげるみたいに、おりのなかのとらやくまに目をやった。

「あらしのせいでみんなあんなんだよ。たかいたかい、ぶらんこのうえのわたしたちみたいに、あんぜんじゃないからね。かぜがふけばふきとばされる、かじになればくろこげにもえちゃう」

「あなた、手をにぎってくださいな」

だんなさんはしんぶんをたたんでせすじをのばし、おおきくぶらんこをゆらしておくさんのほうにふった。いちど手をにぎり、はなれていき、またちかづいてにぎり、そうしてはなれた。

「あなた」

とおくさんはさかさまになったままいった。

「わたしたちはずっと手をにぎってることはできませんのね」

「ぶらんこのりだからな」

だんなさんはからだをしならせながらいった。

「ずっとゆれているのがうんめいさ。けどどうだい、すこしだけでもこうして」

と手をにぎり、またはなれながら、

「おたがいにいのちがけで手をつなげるのは、ほかでもない、すてきなこととおもうんだよ」

ひとばんじゅう、ぶらんこはくりかえしくりかえしいききした。あらしがやんで、どうぶつたちがしずかにねむったあとも、ふたりのぶらんこのりはまっくらやみのなかでなんども手をにぎりあっていた。





( いしいしんじ 『ぶらんこ乗り』より )





ゆ~らゆら キュン



もう大丈夫



小さい嵐が去った。








また次のナツグミ♡楽しみだなー



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