晴れてはいたがまだ風が冷たい日だった。
僕は仲間達と海沿いの街をドライブしていた。
その日は僕が車を出すことになっていた。
ふと人家がまばらな小さな道路を走っていると、
バス停で待つ少女が目に入った。
ショートカットで、ボーイッシュな髪型をした中学生くらいの少女だ。
普段ならそんなことしないのだが、僕はなぜか車を停めて少女に話し掛けた。
詳しくは思い出せないが、知っている顔だったし、
何よりバスがそのバス停を通過するには
1時間以上待たなくてはいけないことをなぜか僕は知っていたんだ。
少女は困惑しながらも、
彼女も僕のことを覚えていたみたいで、
ニコリと笑ってお願いしようかなと助手席に乗ってきた。
別段何もない。
ただ彼女はニコニコしながら僕を見ていた。
僕はまるで年の離れた妹みたいに感じていたから、
彼女くらいの世代の女の子が喜びそうな話題を探して、話し掛けていた。
最初こそ無口な印象だったが、意外にも二人の会話は弾んだ。
僕の精神年齢はちょうど彼女くらいの方が合うらしい。
彼女の家が近付いた。
ありがとう
彼女はまたニコリと笑うと、携帯を貸してと、
言うや否や僕から携帯を掴み取り、何やらいじっていた。
また乗せてね
そう言うと彼女は元気よく、家に向かって走って行った。
携帯には彼女の番号とアドレスが登録されていた。
最近の携帯は重ね合わせるだけでアドレス交換ができるらしい。
便利なものだ。
僕は深いため息をつく。
交換したところで何もありゃしない。
いや、そもそも僕は彼女に何を期待しているのだろうか
<ここで突然時間と場面が変わる。>
気付くと僕は少女と親しくなっていた。
と言っても、情事関係みたいな艶やかなことはなく、
僕らは健全な中学生らしい(笑)交際を重ねた。
一緒にウィンドウショッピングを楽しんだり、
遊園地に行って騒いだり。
ま、車と金がある分、行動範囲は広かったが。
時には家族ぐるみの付き合いをしたりもした。
彼女の家族とは会ったことはなかった。
いつも留守だったような記憶しかない。
僕ら自体はと言うと、
僕はどこか冷めていたのかも知れない。
彼女を妹のように見ていた。
でも、やはり家族とは違う感情は感じていた。
彼女の幼いながら透明感のある肌を見ていると、
まるで繊細な素材で作られた精巧な人形を見ているように感じられたのだ。
その肌に触れる度に愛情に似た甘酸っぱい感覚が胸を締め付けるのだが、
それを僕は罪悪感だと感じていた。
彼女に触れることがとても悪いことのように感じたのだ。
いや、それは少女だからではなく、女性に触れること自体が僕にとっては
どこか神聖なことに感じられていたのかもしれない。
そもそも僕は彼女をはじめから少女だと思って決めつけているが、
実際は何歳なのかもわからない。
<ここでまたもや場面が切り替わる>
ある日、僕はシャワーを浴びていた。
休日だったと思う。
突如、悲鳴が聞こえた。
何かと思い、シャワーを止め、振り返ると、
すりガラスの向こうに人影が見える。
次の瞬間、それが何か固いものですりガラスをたたき始めた。
ガンガンガン
音が怖い。
彼女だ。
なぜだか瞬間的にそう思ったのだ。
彼女は包丁を持っており、その柄ですりガラスを叩いているのだ。
ものすごい声で僕の名前を呼んでいる。
少女は壊れてしまった。
結局、警察が来て、少女は白い病院へと連れて行かれた。
それからしばらくたって
僕は、ある時、たまたま少女が収容されている病院へ行った。
少女はまるでお人形のように、心のない、モノになっていた。
でも僕を見るや否や
まるで狂ったように僕にすがりついてくる。
そして僕の名前を呼ぶ。
無機質に、抑揚なく、何度も何度も繰り返して。
僕は持っていたカバンで少女を、いや、人形を何度も何度も殴りつけた。
怖くて怖くて、ひたすら殴りつけた。
誰も止めない。
少女は、いや、人形は。
それはもう完全に、人形だった。
人形が、無機質な声を出して、僕の足を食い千切ろうとする。
僕は怖くて
何度も人形の頭を打ち付ける。
人形の頭は、無残にもひしゃげ、つぶれていた。
ようやく人形は僕の足を離す。
それでも人形は、機械のような音で僕の名前を呼び続けていた。
僕は仲間達と海沿いの街をドライブしていた。
その日は僕が車を出すことになっていた。
ふと人家がまばらな小さな道路を走っていると、
バス停で待つ少女が目に入った。
ショートカットで、ボーイッシュな髪型をした中学生くらいの少女だ。
普段ならそんなことしないのだが、僕はなぜか車を停めて少女に話し掛けた。
詳しくは思い出せないが、知っている顔だったし、
何よりバスがそのバス停を通過するには
1時間以上待たなくてはいけないことをなぜか僕は知っていたんだ。
少女は困惑しながらも、
彼女も僕のことを覚えていたみたいで、
ニコリと笑ってお願いしようかなと助手席に乗ってきた。
別段何もない。
ただ彼女はニコニコしながら僕を見ていた。
僕はまるで年の離れた妹みたいに感じていたから、
彼女くらいの世代の女の子が喜びそうな話題を探して、話し掛けていた。
最初こそ無口な印象だったが、意外にも二人の会話は弾んだ。
僕の精神年齢はちょうど彼女くらいの方が合うらしい。
彼女の家が近付いた。
ありがとう
彼女はまたニコリと笑うと、携帯を貸してと、
言うや否や僕から携帯を掴み取り、何やらいじっていた。
また乗せてね
そう言うと彼女は元気よく、家に向かって走って行った。
携帯には彼女の番号とアドレスが登録されていた。
最近の携帯は重ね合わせるだけでアドレス交換ができるらしい。
便利なものだ。
僕は深いため息をつく。
交換したところで何もありゃしない。
いや、そもそも僕は彼女に何を期待しているのだろうか
<ここで突然時間と場面が変わる。>
気付くと僕は少女と親しくなっていた。
と言っても、情事関係みたいな艶やかなことはなく、
僕らは健全な中学生らしい(笑)交際を重ねた。
一緒にウィンドウショッピングを楽しんだり、
遊園地に行って騒いだり。
ま、車と金がある分、行動範囲は広かったが。
時には家族ぐるみの付き合いをしたりもした。
彼女の家族とは会ったことはなかった。
いつも留守だったような記憶しかない。
僕ら自体はと言うと、
僕はどこか冷めていたのかも知れない。
彼女を妹のように見ていた。
でも、やはり家族とは違う感情は感じていた。
彼女の幼いながら透明感のある肌を見ていると、
まるで繊細な素材で作られた精巧な人形を見ているように感じられたのだ。
その肌に触れる度に愛情に似た甘酸っぱい感覚が胸を締め付けるのだが、
それを僕は罪悪感だと感じていた。
彼女に触れることがとても悪いことのように感じたのだ。
いや、それは少女だからではなく、女性に触れること自体が僕にとっては
どこか神聖なことに感じられていたのかもしれない。
そもそも僕は彼女をはじめから少女だと思って決めつけているが、
実際は何歳なのかもわからない。
<ここでまたもや場面が切り替わる>
ある日、僕はシャワーを浴びていた。
休日だったと思う。
突如、悲鳴が聞こえた。
何かと思い、シャワーを止め、振り返ると、
すりガラスの向こうに人影が見える。
次の瞬間、それが何か固いものですりガラスをたたき始めた。
ガンガンガン
音が怖い。
彼女だ。
なぜだか瞬間的にそう思ったのだ。
彼女は包丁を持っており、その柄ですりガラスを叩いているのだ。
ものすごい声で僕の名前を呼んでいる。
少女は壊れてしまった。
結局、警察が来て、少女は白い病院へと連れて行かれた。
それからしばらくたって
僕は、ある時、たまたま少女が収容されている病院へ行った。
少女はまるでお人形のように、心のない、モノになっていた。
でも僕を見るや否や
まるで狂ったように僕にすがりついてくる。
そして僕の名前を呼ぶ。
無機質に、抑揚なく、何度も何度も繰り返して。
僕は持っていたカバンで少女を、いや、人形を何度も何度も殴りつけた。
怖くて怖くて、ひたすら殴りつけた。
誰も止めない。
少女は、いや、人形は。
それはもう完全に、人形だった。
人形が、無機質な声を出して、僕の足を食い千切ろうとする。
僕は怖くて
何度も人形の頭を打ち付ける。
人形の頭は、無残にもひしゃげ、つぶれていた。
ようやく人形は僕の足を離す。
それでも人形は、機械のような音で僕の名前を呼び続けていた。