医療に関連する全ての問題は、結局「病院数を3000施設に集約化する」事なしには解決
できないと思われる。
同様に放射線治療施設についても最大200施設以内と考える。
その半分を重粒子線施設に置き換えるとしても、全国に100施設以下。

人口と癌罹患率、医師を含む医療体制の最適な配分という観点からすると、加速器研究者
が目指している「会議室に入る粒子線治療装置」は当面それほど重要な境界条件では無い。
体育館を建てるぐらいの土地は各県に2つや3つ、確実に確保できる。

レーザー加速や超電導シンクロトロンによる照射装置は確かに素晴らしい未来ではあるが、
数人の医師+スタッフとメーカーメンテナンスで管理・運転ができ、価格が5億円以下、
という時代は恐らく20年程度以上?先になるのではないだろうか?

全国の小規模病院で粒子線治療を行う目標設定は、あくまでも医師会が固執し続ける現在の
医療体系の延長上の考え方であり、破綻確実なパラダイムに足を引っ張られた考え方である。

症例を蓄積し、レーザー加速など究極の技術革新の開発を後押しする意味でも、むしろ、
・少ない施設数で多くの患者を受け入れる。線種は取りあえずカーボン。
・ガントリーでなく22.5°刻みの照射室を2室ずつ10室。患者のチルトで微調整。
・固定と位置調整を行うのは4人×5チーム体制。1チームが30分で1人の患者を担当。
・8時~15時と15時~22時の2交代制。14時間×2人×5チーム=140照射。
・年間200日稼働し28000照射。1人平均10回とすると年間最大2800人。
・常勤医師3名、外勤5人程度が週1~2日担当。医師が患者と毎日会う必要など無い。

最も近々に求められる加速器側への要請は、
・ビーム行き先制御の簡便化、ビームダンプ、モニターシステムの信頼性アップ。
・3日程度のメンテナンス×数回で通年運転可能な予備品・消耗品のデータベース化。
・照射シミュレーションと位置確認に寄与できる人材育成。(その前提として規制緩和)
といった実際的な開発課題だろうと考える。

厚労省や医師会が唱え続ける「均てん化」とは正反対のアプローチである。

将来的には各地のがんセンターや大学病院に「付属」(併設である必要は殆ど無い)
の施設として100拠点という事であるが、その先行機として10台程度を開発する。
先行機10台の設置場所として最も面白い案は「空港」(できれば国際空港)。

・電気、水、敷地などの施設インフラが整っている。
・アクセス、(送迎すれば)宿泊、食事、買い物などの集客インフラも備わっている。
・国内の患者需要をバランス良く調整できる。例えば「新千歳空港粒子線センター」が
 2ヶ月待ちなら1週間待ちの高知空港粒子線センターで治療し週末は自宅で休憩。
・取りあえずの候補は新千歳、仙台、羽田(有明と豊洲)、名古屋、関空、福岡、
 広島、高知、那覇。など。韓国、中国からの海外需要も見込める。
・職員は100人規模だが、地元枠を設け研修後に照射補佐員として技術職も採用。
 医師は常勤2名+外勤5人。オンライン診断、管理のモデル事業とする。
・症例、治療データベースは一元管理し、辻井先生や菱川先生クラスが統括する
 粒子線治療症例検討委員会で整理、評価し知見を蓄積する。(実作業は外注で充分)
・各施設は年間2000人の受け入れ体制だが、ネットワーク化する事で実質的に
 年間2万人の患者治療とデータ収集を行う世界最大?の放射線治療病院となる。

2015年に「空港粒子線センター」が治療を開始し、2017年までにデータを蓄積すれば
恐らく癌治療の景色は一変する。放射線治療の約10%が粒子線に移行。腫瘍が見る見る
小さくなり、再発しない。絶大な効果を多くの国民が目の当たりにする事になる。

建設費は70億×10台?、費用負担はおおよそ、
・医療と切り離した設備使用料を設け、全額患者負担で40万円。
・診療報酬負担分が180万円。患者負担は3割なら60万円。
・2度目以降の照射は設備使用料は無し。といったレベル?
・1施設の収入は年間2000人治療した場合44億円。
・ただし保険料負担は120万円×2000人×10拠点=240億円/年の増加。
・人件費、電気代を含めると10拠点で年間概略400~500億円の事業規模。
ぐらいで想定してはどうだろうか。

日本製の車やテレビが飛ぶように売れた70年、80年代にダムや道路建設や農地整備に
資産をばらまいた結果、全員が満足する医療はもはや不可能な状態。

粒子線癌治療装置の先行機配備(500億円)や「医師確保、救急・周産期対策の補助金等
(NICUなど)」事業(570億円)、UFTなどの効果の無い抗癌剤とそれを処方する医師に
300億円払い続けるか?といった事を社会的優先度など鑑みて再編する必要がある。

最も簡単で不利益が発生しない案は、10万人の開業医の平均年収2500万円を1000万円ずつ
削減し、約1兆円を削減する事(ドイツ並みの水準)。
議論の余地無く即断すべきと考える。
これも「病院3000施設」が実現すれば自然に解決できる。