高知大側の報告では(2008年時点で)
・50例中、著効は70%
・高齢者の進行乳がんに限れば15例中12例が1年以上の著効継続中。との事。

ただし放射線治療では癌種と部位を選べばこのぐらいの報告は珍しく無い。
あえて治療情報の中身を「縮退」させた統計で比べれば「重粒子も陽子もIMRTも
大して成績は変わらない、、」といった、政治的な主張も可能かも知れない。しかし、

ビームハンドリングの面倒さを差し引いても現状最も優れた線種は重粒子線であるし、
その理解は高知大の小川恭弘教授もほぼ同じだと思う。粒子線やフォトンの先進照射
装置までを含めた「実力」を把握している(意外と数少ない)医師の一人だと思う。

増感放射線の目標は低コストかつ早期に重粒子に近い治療効果を普及する事にある。
あくまでも「私の見方」なので間違いもあるかも知れないが、、

・皮膚癌、肉腫など「投与しやすい」患部には重粒子に近い効果が期待できそう。
・乳がん原発及び肺癌なども含めたリンパ節転移には早急に増感剤を併用すべき。
・消化管や(私の様な)薄い骨など粒子線が撃てない患部にはむしろ第一選択肢かも?
 カテーテルや内視鏡による増感剤注入法(抗癌剤併用?)も検討の余地があるかも?

・ただし、放射線と増感剤投与の負担を考えると多発転移患者にはやはり厳しそう。
・また、原発・転移を含め肺内の患部には恐らくリスクが高く、効果が少なそう。
・頭頸部、咽頭にも効果的だが照射源はIMRTやノバリスなど先進装置にすべき。

消化管などの患部を除き、(前処置を含めた)負担と効果の面で「重粒子を越える」こと
は恐らく難しいと想像する。しかし技術的な面だけを考えれば、殆どの放射線治療施設で
半年以内にスタート可能な治療であると思える。

実用段階での問題は前処置や患者の管理に要する人手と、手間ヒマに対する技術料
(診療報酬)の設定額・時期になるだろう。また出来るだけ多くのリニアック施設で
臨床試験を分担して進めるべきだと考える。

私自身の1症例でも初期反応としては「重粒子に近い感じ」と言っても良さそうである。
照射8回後のMRIでも縮小・変成が確認され、照射後の疼き具合も重粒子と比較して、
遜色無い程度であった。ただし、このまま局所制御に至る保証は全く無い。要経過観察。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-kochi_MRI1

骨折リスクを避け線量が足りない事と、増感剤が腫瘍全域に行き渡っていない
可能性があり、高知大としても「残存は充分あり得る」というスタンス。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-kochi_MRI2

図はT1強調像(繰り返し時間TR=400-600msec、エコー時間TE=10-12msec)
脂肪、骨髄>筋肉>浮腫、変成>水、腫瘍、、の順で白いので、腫瘍は黒っぽく映る。
中心部を除き腫瘤部が全体的に「浮腫」っぽくなった?様に見える。