こんにちは。プロデューサーの西村義明です。今回は、映画「メアリと魔女の花」の声の出演者を決める作業、映像業界で言うところの「キャスティング」について、少し書きます。

 

先般、「メアリと魔女の花」の主人公・メアリ役の声を、女優の杉咲花さんにお願いしたことを発表しましたが、本日は、メアリ以外の主要な登場人物、声のご出演者の方々の発表をしました。多くのキャラクターや生き物が出てくるのも本作の魅力のひとつです。今回発表した以外にも魅力あるキャラクターがいますが、今は未だ発表は控えます。今回、たいへん豪華な役者の方々から出演のご快諾いただき、ほんとうに有難い気持ちでいっぱいです。

   

 現場のクリエイターの手によって描かれ、色付けられ、背景美術やCGによって立ち現れる空間に存在し、遂には映画の世界で活き活きと命を宿した登場人物たち。彼ら、彼女らは、その時点ですでにパラパラとした絵の連続を超えて、魂を持ちはじめます。しかしそこに、人の声、経てきた人生によって変化し続ける役者の声が入ってこそ、アニメーション映画は人間の真実の物語へと変化を遂げるのだと思います。

 

 声の出演者を選ぶ作業は、米林監督(通称:マロさん)のように自分で全ての絵をチェックし、直していく監督の場合、とても一人でやりきれるものではありません。「マーニー」に続き「メアリ」でも、キャスティング事務をお願いしている外部プロダクションに協力をお願いしつつ、まずはプロデューサーから、監督に候補を提案していきます。

 

この作業、もちろん容易ではありませんが、あまり困ったこともありません。スタジオジブリ在籍の頃から、マロさんとぼくは、企画段階から、映画の内容を、人物の性格を、その背景を話し合いながら、脚本・キャラクター造形・絵コンテへと進んでいますので、監督が欲しい声とぼくが提案する候補の方の声が、すれ違うことは稀です。

 

 しかし、今回ばかりは、気持ちの上で難儀しました。映画「メアリと魔女の花」は、スタジオジブリを退社した米林宏昌監督の第3作目、監督としての勝負作です。マロさんはその気概をもって、ジブリ人生約20年のすべてを注ぎ込む覚悟で、今も頑張っています。

 

 マロさんがその覚悟で作るならば、考えられうる最高の声と芝居を実現させたい。監督が追い求める理想を可能な限り実現していくのも、ぼくらの仕事のひとつです。毎日毎日一生懸命、よい映画を作ろうと朝から晩まで描き続けている監督の背中、現場で踏ん張るクリエイターの姿を見ていると、もう、それこそ、生半可な気持ちで声なんて選べません。マロさんの頑張りは凄いです。ほんとうに。

 「描き続けるのが、ぼくたちの仕事ですから」

 こういうことを、さらりと言ってしまう素敵な監督です。 

 

最高の声と、最高の芝居。それを実現させるために、これまでマロさんが絵コンテ等で描いてきたキャラクターの顔、造形、喜怒哀楽の表情、その芝居を、脳内で再生しつつ、候補の声を絞りこんでいきます。役者の声だけを頼りに、声質や芝居の癖、笑い声や少しの呟きに垣間見える人間性、それをとらまえようと耳に集中します。視覚はマロさんの絵を浮かべ、聴覚から入ってくる声をガッチャンコしていく。時には即座に確信したり、何度も何度も聞きなおしたり。眉間に皺を寄せながら、絞り込んでいきます。

 

しかし、ここで、一つの不安がありました。

 

ぼくら、スタジオジブリじゃありません。もしかしたら、興味をもっていただけないんじゃないか。

 

ぼくらの出演依頼に、役者の方々が応えていただけるのかどうか。

 

 「マロさん、今回のキャスティングは、苦労するかもしれません。」

 

 そんな話もしていました。

 

 しかしなんと、皆さん、ご快諾いただけたのです。

 

 それで、有難い気持ちでいっぱいです、と冒頭に書いたわけです。
 

 

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アフレコは、5月!最高の出演者、そして、米林宏昌監督の精緻な美術と圧倒的なアニメーションで、みなさんに楽しんでいただける夏のエンターテインメント作品を目指します!ぜひ、ご期待ください。


映画「メアリと魔女の花」予告編第2弾