FAKE


ダイノジ、水道橋博士、上野千鶴子、鴻上尚史、平野啓一郎・・

映画の試写会で、こんなにたくさんの「人」を初めて見ました。
みなさんにとって、とても気になるテーマだったのだと思います。

森達也監督本人もいました。
「衝撃のラストシーン12分を、誰にも言わないでください」。

というけれど、誰かに言いたくてしょうがない、
皆さま、あれを、どう思いますかーーー?

6月4日、あすから公開です。映画『FAKE』、ぜひご覧になってください。

FAKE




2011年から、出版事情について寄稿させていただいた北日本新聞コラムが、先日終了しました。
ピントのくるった原稿をずっと受け止めてくださった寛容な担当記者さんに感謝♡
そして、取材させてくださった方々に心から感謝します。


本のへ理屈47

↑ラスト前号の記事。「出版業界」はたしかに斜陽産業であり、そこにまつわる利権構造もどんどん変化してゆくと思う。【出「版」】で食べていくという発想が、もう古いんだと敏い人達が言う。
でも、脳みそがやわらかくできていれば、新しいものを作ってシェアしてお金を生み出せる、おもしろい時代になった。


ライツとか
古いよねと言う
樹里阿奈(c)がいて


↑バブル世代の親を冷めた目でみる、キラキラネームの「さとり世代」が、そろそろ社会人になってくるので、びびりますが・・
 



でも、ロートルでもたえず新陳代謝し、ますます新しくなっていく方もいます。

たとえばこちら。
「聴覚障害」者の、当事者の感覚をマンガであらわすことに挑戦している、作家の吉本浩二さん。

正直むかしは、無骨でごつごつ固い漫画を描く方…という印象をもっていたのですが、

2012年、手塚治虫の壮絶な生き方を描いた『ブラックジャック創作秘話』で、「このマンガがすごい!」1位をとられた頃から、スパークされた気がする。

ブレイクスルーしている作家独特の疾走感を感じます。


本のへ理屈48

最後の記事でご紹介させていただきました。5月30日に1巻が発売されたばかりですが、これがもう。


淋しいのはアンタだけじゃない 1 (ビッグコミックス)/小学館




今まで、聴覚障害をあつかったTVドラマやドキュメントや映画はたくさんあったと思いますが、ほとんど「健常者側から」の視点ばかり。

こんなに「当事者感覚」を表現できた媒体って、あっただろうか。 
私はちょっと思い当たらないです。








「聞こえない」というのは、無音の静かな世界だと思っていたら、とんでもないことがあるんですね。





すごくないですか? よくもこんな、表現を・・



聴覚障害者の人自身にとっても、マンガは、貴重な学習の場なのだそうです。

聴こえる人にとって無音の世界は、「シーーーン」っていう音で表すんだな、とか、
311の時の音ってこんなだったのか、とか・・




聴覚障害×マンガ すごい。

なんだか脳科学の未知の分野に切り込んでくみたいで、ドキドキします。





そして聴覚障害といえば、吉本漫画は、ついに、あの問題に切り込んだ。

佐村河内守氏は、ほんとうに聞こえているのか?いないのか?



吉本さんは「共作」問題にはタッチしない方針で、あくまで「聴こえ」に関して、対面取材に挑まれました。

でも、佐村河内のドキュメント映画『FAKE』を撮っている監督・森さんのカメラが回る前での取材となってしまい、肝をつぶされたようです。

佐村河内氏をバッシングするメディア側として、否定的に撮られるのではないかと・・。

だって森達也さんといえば無頼派。
オウム真理教をめぐるドキュメント映画「A」では、信者をわざと転ばせて、公務執行妨害で逮捕した公安警察の姿を撮り、世間をザワザワさせました。



佐村河内氏は事件後に、最新の客観的科学的検査を受け、診断結果は「平均50デシベルの感音性難聴」。

これは「ふつうの会話が聞き取れない」中度難聴で、音の存在は認識しても言葉としてはわからない状態だとか。






WHOの基準では40デシベルから聴覚障害者と認定されますが、日本は基準が厳しく、70デシベルからでないと障害者手帳はもらえないそうです。
でも、そのことに触れる記者は、全くいませんでした。私もバッシングを鵜呑みにしていました。


しかし吉本さんの漫画のなかで、聴覚障害や難聴の「当事者」たちは、こう言います。

「あれは嘘、ではないのではないか・・」

「50デシベルで聴覚障害じゃない、なんて言われたら恐怖だよ」

「私は彼と同程度だけど、ふつうの生活も仕事もしんどいです」

「障害者手帳がもらえないレベルでも、情報保障が必要ってことに考えが及ばないのか。…ニッポン怖い」









共作問題を知った後に、佐村河内氏の著書を読み、とても不愉快に思い、彼を揶揄するような記事を書いたことがありました。

日本全国一丸となって「サム」をバッシングしている、うっかり、あれは、多くの人の言質があることだと思ってしまった。

「当事者にしかわからないことに ごろつく厨」になりたくないのに・・

佐村河内氏は、確かに嘘をついたようだけれど、、
やっていないこと(聞こえていない音)を、自白させられてはいなかったか。
新垣さんは、本当のことを話したのか。

「FAKE」とは、なにか。だれか。あなたか、わたしか。「どちら側」の「どんな」聞こえ方なのか。


そんなことを考えさせられる、映画とマンガです。セットで見ると、衝撃も倍増します。



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