かわいい夫/山崎ナオコーラ



原宿のブックカフェ『シー モア グラス』さんでチッチ&サリー展が進行中のみつはしさんですが、

このたび、作家の山崎ナオコーラさんの新刊エッセイに、表紙の絵を寄稿させていただきました。明日から発売です。






ナオコーラさんといえば、

人のセックスを笑うな[DVD]


人のセックスを笑うな/河出書房新社



斬新なタイトルやペンネームで話題となったデビュー作…

ですが、内容は、19歳大学生男子と39歳女性美術講師の、恋愛とその喪失を描いた、私には朴訥な印象のあるものがたりです。

男子学生の臆病とかモヤモヤとかゆらぎとか、現実はそうそう合理的にはわりきれない…ことを、きっちり女性目線で描きったかんじが「新しい」と、評価されましたが、

たしかに、「19歳の男子らしく」、それっぽくガワから寄せていこうとしない感じが、誠実な書き手だと思いました。



そんなナオコーラさんが出す、最新作エッセイ『かわいい夫』。


先にゲラを読ませていただいたら、描かれる夫君の様子が、かわいい…。

書店員さんである夫君に、何度かお会いしたことがありますが、御自身もたしかにかわいい。くるくる動かれて、フォトジェニックっていうか、エッセジェニック。書きたくなるのわかるなあって、ご本人に言っちゃったら、全然気を悪くされない感じで「てへ。そうですか」なんて、嬉しそうなのです。



個人的には、妻コーラさんが、夫をつい理詰めで口責めする時、にっちもさっちもいかなくなった夫が、じわっと涙を浮かべるというシーンに、感情移入しました。

あった あった。うちも、15年前は。

夫をじわっとさせたことが悲しくて自分も泣きたくなった、新婚時代。

今ではお互いどつきあっても、もうびくともしません^^。



が、ナオコーラさんに触発されて、うちも「カワイイ夫」ぶりを一筆したくなりました。

一緒に仕事をしているので、うちは仕事と夫婦の問題が直結しています。



先日、運営している「談話室」の、お客様のご予約時間を間違えて、カギをあけないまま、
セミナー講師であるお客様をしめ出すという、やってはいけないことをやってしまいました。

管理人の夫、気づいて「やってもうたー」と泣きながら外に飛び出すと、

家の前で、ばったり、

愛らしい外国人ベビーシッターさんを連れた、小雪&松ケン夫妻とそのお子様たち‥
‥それはそれは優雅に、ゆっくり歩く、美しいご一家と出会ったそうです。

自分はと見れば、爆発したヘアに着古したスウェット姿に破れジャンパー姿で、なんかスーパーのビニール袋を持ってハアハアして…。

きっと、松ケンご一家は、どこかの庭師だと思ったんじゃないかと。

ますます「うわーん」と泣きたい気持ちになったそうです。


と、べそをかいて戻ってきた夫に、

「もう、やめてよー。そんな汚い恰好でうろついたら、松ケン一家に迷惑でしょ」
と、追い打ちをかける。

「だいたい、そんなポカするんだったら、私にカギと管理を預けなよ」

そうしたら、「アバウトなあんたに、そんなもん任せられるかー」と夫、絶叫。

これは彼なりに、管理仕事が苦手な私を気遣ってくれてるのね。とのんきに思う、、
かわいい夫の話、というより、自己申告制・鬼嫁日記なのですが。




そんなことを思い返させてくれる本書。

夫がかわいい人にも、かわいくない人にも。ご夫婦へのプレゼントにもおすすめ。ナオコーラさんらしい丁寧な筆致の一冊です。


ちなみに、若気の至りでつけたそのペンネームを、今は後悔されていると、本書に書かれていました。

ちょっと、噴きました^^。


かわいい夫/山崎ナオコーラ