微熟女です。週末は、岩手県の大槌町という被災地ですこし労働をしてきました。

金曜の夜行バスで出かけ、月曜の朝にバス帰宅。温泉や酒肴のついているのゆるいボランティアツアーです。

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スタート時はやる気満々だった私。「一日に4時間労働なんて軽すぎる。もっとガチ労働コースはなかったの」。手配してくれたポンチ君を非難しました。が、私が悪うございました…

4時間、防じんスタイルで、中腰で泥を掻きだし続けるツラさったら…。
私のような根性のない人間には4時間労働が関の山。宿泊した釜石のホテルは仮オープン状態でしたが、お布団のありがたさ、温泉のありがたさったら…。


こうした、ゆとり系ボランティアなら敷居が高くないようで、老若男女が参加されていました。上は65歳の方も。ただし40歳~50歳ぐらいはスッポリいません。子育て世代ですね。


この「名鉄観光サービス」のツアーを、参加した皆さんは絶賛していました。「山屋」さんという大黒天に似た添乗員の人徳がすばらしかったというのもありますが(皆と一緒に働きまくり、皆がバスで休んでいる時も働きまくり)、本当によく練られたツアーだったと思います。

http://www.tvac.or.jp/tuna/21482.html
http://www.tvac.or.jp/tuna/21480.html


お伝えしたい結論からいうと「少しでも時間のある人は、物見遊山でいいから現地に行かれたらいい!」。
現地でお話した被災者は、みんなそうおっしゃっていました。

「遊びに来てくれるだけでいいです。こっちの料理を食べてお土産を買い、こっちの温泉につかり、交通を使い、そして私たちとお話していってください」

「お国に帰って、ここで見たことを伝えてくださればいいです」


「遊び半分やなまぬるい気持ちでボランティアに来るべからズ!」みたいな論調をよく見聞しましたが、(阪神大震災の被災者が迷惑されたという…?)誰がそんなことを言っているのだろう?

「ようこそおでんした。被災地に遊びに来るなっていうほど、オレらは了見せまくねーよ」

東北人独特の気質なのでしょうか? 懐が深い。

ツアーの中には、阪神大震災経験者も何人かいましたが、「阪神とこの地震とは、状況も規模も全然違う。阪神の経験があてはまらない…」とおっしゃっていました。


大槌町のごく一部の風景です。これが何百エリアもあると思うと、気が遠くなります。それでも道路の瓦礫をどかし、車が通れるようにしただけで、かなり進捗だそうです。3ヶ月たってこの状況ですから、瓦礫がなくなるにはまだまだかかると思います。
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ボランティアというのは、お金のためでなく、人のためでなく(そんなに役に立てない)、自分のためでもない(急に善良になったりしない)。ただそこに瓦礫があるからやっつけるだけ。

でも、こんな無意図の作業を今までの人生でしたことがあったかな…。なんにも考えずに目の前のヘドロと格闘していると、気がつくと数十分たっています。

「ボランティア禅」とでもいうか。こういっては不謹慎でしょうが、この無我が、正直、快感です。一度ボランティアをやった人は、取りつかれることが多いと言われますが……こうした感覚もあるのではないでしょうか。


上の精神に反するようですけど、被災地で組織的労働をすると、いかに武器(道具)を効率的に配布し、兵隊(人)を効率的に動かし、いかにすみやかに敵(障害物)を撃退するかという、サバイバル能力が向上します。企業を率いるリーダーも来られたらいいと思う。


避難所をのぞくと、皆さんの方から声をかけてくれます。

「ボランティアの人か? どこから来たんだ」
「東京です」
「だろうな。首におしゃれな布を巻いてんな」
「これ、手ぬぐいです(無印の綿ストール)」
「ここじゃ、そんなおしゃれな手ぬぐい売ってねえよ。ハハハ。東京の人が、いま時分来てくれるだけで嬉しい。この辺は、テレビであんまり報道されてねーし、地味だから誰も来ねえ。ボランティアの人数もドンドン減ってるよ。来てくれて本当にありがとう」 「ありがとう」 「ありがとう(合唱)」
「………」

被災者の人に励まされるとよく言うけど、こういう事かと思いました。ただ元気な姿を見せよう、笑わそうとしてくれます。
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仮設住宅の建設の遅れで国が責められています。でも住宅を建てるには、ライフラインを確保する必要があります。水道が引けない状態なので井戸を掘るのですが、掘ってみて、水が出なかったらアウトです。

また、難しい、住民同士の「なわばり」意識もあるのだそうです。

私が訪れた「大槌町」の近くには、柳田国男の『遠野物語』で有名な遠野市があります。遠野市が「仮設住宅をこっちに建てよう」と申し出ても、大槌町側には「遠野市に住民を取られるよで…」という思いのある方がいるそうです。

また、同じ町でも「流されなかった」家の人は「流された」家の人に、活発な意見が言えないそうです。

こういうビミョ---な問題がごっそりあり、今後はもっと噴出するでしょう。これらをまとめるべき町長さんは津波で流され、首のない姿でご遺体が発見されたそうです。

……私たちが、国の対応が遅いだとか、永田町が揉めているとか言って非難しているのは、ちょっと違うかなと思いました。

例えばこうした有事に、もっと機能するのは「道州制」じゃないか。有事じゃなくても道州制にすると解決できる問題がたくさんあり、そんな改革を考えるチャンスではないか。これからは道州制を進めたい政治家や、水を掘りあてられる企業を積極的に応援しようと思いました。(←世界中で役にたつし)


最後の日、盛岡市の温泉の中で隣り合わせた老婦人と、いろいろお話をしました。ご自身も被災したのに、私たちボランティアをねぎらう事ばかりおっしゃいます。

入浴前にお酒を(チョット)たしなんでいた私は、ホロ酔いで生意気を言いました。

「このあたりって、独特ですね。ふとした小さい山に、太い木を組んだだけの鳥居が沢山あったり。あれ、よその県ではそんなに見ない気がします。おうちの裏に、フツーに神様スポットがあるんですね。不思議ですね。私、ザシキワラシのような、ふしぎな人?も目撃しました。岩手県は、どこにもない個性的な県です。また美しくなってもらいたいから、おてつだいに来ます~」

老婦人は、手ぬぐいを顔に当てて言いました。

「遊びにくるだけでいいから、また、来てな。次に来てくれたときは、もっともっと、きれいで、おいしい物を食べさしてあげる岩手になってるから」


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瓦礫を押しのけて咲いていた。