自室のベッドから窓の外を見やると、ソラは一面朱色に染まっていた。
誰も居ないお屋敷の静けさを幸いに、趣味の読書に没頭していたらいつの間にか夕方になっていたらしい。
ソラは赤く、窓から見える景色も朱に染めていた。
もう少し経てば義兄が帰宅してくるだろう。そうすれば今は静まり返っているこの井上邸も、無粋な雑音に溢れることになる。
この家で唯一気に入っているのは、日中の静けさだけだと言っても過言ではない。
この屋敷に来てから、気づけば10年が経とうとしていた。
父親のいなかった私に義父と義兄が出来ると聞いた時、拒絶半分戸惑い半分の複雑な思いだったことを今でも良く憶えている。
それでも、再婚する母を祝福しようと子供ながらに考えていたはずだ。
けれど、当の母もその再婚を心から喜んでいる風では無いように感じ、私としてはこの屋敷に来ることは苦痛以外のなにものでもなかったように思う。
その母も、3年前に他界している。
元々あまり健康とは言えず、ことあるごとに病院で検査を受けていた母だったが、その検査通院のさなか、交通事故に遭ってしまい帰らぬ人となってしまった。
母が亡くなってから間もなく、私も病名不明の病を患い、大手術を受ける羽目に。
手術は成功したものの、それからというもの発作が起きるようになってしまい、こうして週に4日は自室のベッドの上だけで生活するようになっていた。
階下から雑音が聞こえるようになってきた。義兄が帰宅したのだろう。
ひとりで居られるお気に入りの時間も、今日はこれまでのようだ。
願わくは、明日という平穏が少しでも早く訪れますように。
願わくは、ひとりという至福の時間を、誰にも邪魔されませんように。
かなわぬ願いを胸に、今日もまた、偽りに満ち満ちた夜を迎える。