東日本大震災で親を亡くした県内の子どもたちの就学支援を目的に県が設立した「いわての学び希望基金」は、県内外から約17億8千万円の寄付金が集まっている。ただ、未就学児を含め対象となる全ての子どもが社会に出るまで支援するには約2億円足りない。対象者は今後増加する可能性もあり、県は多くの善意に感謝する一方、長期的支援を広く呼び掛けている。

 同基金は、対象となる子どもたちに返還不要の奨学金を給付する目的で設立された。7月末現在、県内外から集まった総額は義援金などを含め約17億8千万円。5月から受け付けを始め、約1800件の善意が県に届けられた。現時点では、全対象者を社会に出るまで支援するために必要な事業費は約19億8千万円となっている。

 対象者は震災で両親が死亡か行方不明の「震災孤児」か、両親のいずれかが死亡か行方不明の「震災遺児」。これまでに判明した0歳から大学生までの約600人が対象だが、遺児や孤児全てを把握しておらず、対象者は増える可能性がある。

 奨学金は大学や専門学校を卒業するまで月1万~5万円を支給し、小、中、高校卒業時にそれぞれ一時金を支給する。

 県教委の石川義晃企画課長は「年齢が上がるごとに部活や模擬試験など多くの資金が必要になる。子どもたちは震災で突如大切な物を失った。この基金で終わりということではない。将来の夢を断念させないためにも末永い支援が必要だ」と長期的な支援を目指す。

 震災孤児や遺児は、年金暮らしの祖父母や、一人親が育てており、経済的な負担は大きい。津波で息子夫婦を失い、大学生と高校生の孫が孤児となった陸前高田市の女性(75)は「高校3年の孫は大学進学を目指している。年金生活なので、幅広い善意はとてもありがたい」と感謝する。

 申請は秋から受け付け、本年度分は4月までさかのぼり年内に支給を開始する予定。

 寄付についての問い合わせは、法人(団体)が県の復興局総務課(019・629・6922)、個人は税務課(019・629・5144)へ。




  (2011/08/22)  岩手日報より