船木がプロレスに復帰した。

今やバリバリのトップレスラーである鈴木みのるを相手に、
想像以上に凄い試合をやってのけた。

それにしても、約20年ぶりという純プロレスのリング。

さすがの船木といえども、
初戦は調子をつかめず
いいようにあしらわれるのではと思っていた。

ところが、である。

船木のあまりの勢いに、
いや、恐らく初めて体感したであろう
かつての兄貴分の「プロレスラー」としての力量に、
あの鈴木が明らかに動揺し、圧倒されていた。

間合いをつぶされ、
自分のプロレスが出来なかったのは
むしろ鈴木のほうだったのである。

これまでいろんな格闘家たちが
失敗と勘違いを繰り返してきたように、
どんなにMMAで実績があろうと、
迫力のあるプロレスができるわけじゃない。

しかし、船木にはプロレスのベースがある。

それも、十把一絡の選手ではない。

かつては「2001年の星」と謳われ、
10代にしてその未来を嘱望されたほどのプロレスラーだった。

持って生まれたプロレスセンスと、
リアルな世界で生き抜いてきた誇り。

二つの要素が見事にMIXして、
闘いに緊張感とリアリティを生み出した。

今のプロレスからは失われた「何か」が、
そこに確実にあったように思うのだ。

この数年、猪木が口を酸っぱくして言っている
「プロレスと格闘技は同じ」という言葉。

ジョシュや小川など、
その思想に賛同している選手は多いが、
実際に体現できているかといえばNOである。

プロレス=闘いである以上、
「本物の世界」を知っているに越したことはない。

けれど、プロレスのリングで闘いを見せるには、
やっぱりプロレスの技術も必要なんである。

リアルを知っているという凄み。

ギミックじゃない狂気。

やっぱりこの男はプロレス界を背負う運命にあるのかもしれない。