人はなんで誰かを愛するのだろうか


孤独が苦しいからだろうか



寂しいという感情をもて余した時

自分のことを解ってくれている

理解者が欲しいからだろうか



その存在はある人にとっては家族であり

友人である人もいるだろう



しかしその存在が恋人である時

多くの場合

そこには身体の関係も含まれるのだろう



そう思うと

より自分の愛すべき存在が

異性であるということは

出逢う時期が結婚適齢期やシングルであれば

幸運であろうし



そうでない場合は

色々と複雑に利害関係や責任問題が絡むようになる



私にとって彼は後者である


少なくとも今まであった多くの人間との

出逢いの中で彼がダントツだろう



こんなにも語らずとも

解ってくれる存在に

出逢ったことはなかった



奇跡の相手

出逢った時  私はそう思った



運命の相手

そう呼ぶ人もいるかもしれない



しかし本当のところ彼がそうであるか

私にはまだ分からない



きっと私がその生涯を終えるとき

初めて答えが出るのだろう



私たちは私たちの関係を

どうするべきなのだろう



責任をとるべき相手が存在するなかで

今向く方向はどちらであるべきか


責任を優先とした場合

それは人として至極真っ当な生き方であり

誰にも後ろ指を指されることなく

人生を全うしたと言い切ることができるだろう



しかし

この先の時間の多くを

自分の気持ちを抑え我慢しつづけることは

自分の人生に対してだけ述べるとすると

それは冒涜でないだろうか



そういった葛藤が頭に浮かんでは消える



好きな人を純粋に愛し

生きることができる人間の生涯は

本当に幸せなんだろう



彼に愛されることにも

彼を想うことにも

責任をとらねばならぬ存在にも

色々なものを背負いつつ

私はどこまでいけるだろうか



それを全力でやってみたとき

どれだけのことが出来ているのだろう

何かを残すことが出来ているのだろうか




悩む日が続いている





余談

私が好きな詩人の中に谷川俊太郎さんがいる

有名で存在大きすぎるけれど


そのなかで一番好きな詩がある

「あなたはそこに」だ

これを何度も読み返す時  少し心が軽くなる


好きな一節はこれ

「ほんとうに出会った者に別れはこない」


ここも好きかな

「あなたとの思い出が 私を生かす」



そう愛したいし

愛されたいと思う



***************

「あなたはそこに」谷川俊太郎

あなたはそこにいた 

退屈そうに右手に煙草 左手に白ワインのグラス

部屋には三百人もの人がいたというのに
地球には五十億もの人がいるというのに
そこにあなたがいた ただひとり
その日その瞬間 私の目の前に

あなたの名前を知り あなたの仕事を知り
やがてふろふき大根が好きなことを知り
二次方程式が解けないことを知り
私はあなたに恋し あなたはそれを笑い飛ばし
いっしょにカラオケを歌いにいき
そうして私たちは友達になった

あなたは私に愚痴をこぼしてくれた
私の自慢話を聞いてくれた 日々は過ぎ
あなたは私の娘の誕生日にオルゴールを送ってくれ
私はあなたの夫のキープしたウィスキーを飲み
私の妻はいつもあなたにやきもちをやき
私たちは友達だった

ほんとうに出会った者に別れはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ 繰り返し私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
初めてあなたを見た日から こんなに時が過ぎた今も