鞭打ち損傷では、頚や頭にどれくらいの衝撃が加わると、どのように障害されるかはよく研究されているが、三半規管にどのような影響を与え、そして三半規管を介した前庭系の反射にどのように影響するかはあまり知られていない。

 三半規管には前半規管・後三半規管・外側半規管の3つがある。これらは頭の回転等によって刺激され、刺激に応じて反射が誘発される。反射には頭部の動きに応じて眼位を維持するための反射である前庭動眼反射、頭の位置を保つための前庭頸反射や姿勢を維持するための前庭脊髄反射がある。交通事故の衝突によって頭が強い力で振られたばあい、三半規管を介した反射によって眼球の位置、頭の位置、姿勢に強く影響が出る。

 車の走行中にお釜を掘られた場合は、頭は前に振られ、次に反作用の衝撃で後に振られる。このとき最初に前半規管が刺激され、前庭頸反射が発動すると頚の後の筋肉を緊張させて頭を元の位置に戻そうとする。 次の反作用の衝撃では、後半規管が刺激されて前庭頚反射が発動、頚の前の筋肉が緊張して頭の位置を元に戻そうとする。結果的に前と後の三半規管が働く事で頚の前の筋肉と後の筋肉が同時に収縮する。この反射は、刺激が無くなった時点で終了する。しかし、鞭打ちの場合はその後も反射活動が継続して首の筋肉の緊張を長引かせてしまう。三半規管は単なる感知器であるから反射を長引かせたり増減させたりする事は出来ない。だから
三半規管の問題ではなく、前庭頚反射の親玉である前庭神経核がこの反射を長引かせていると思える。

 この前庭神経核は、三半規管から刺激を受けるとあらかじめプログラムされている先のような反射運動を発動する。この前庭神経核も
小脳や大脳新皮質など上位の中枢に調節されている。特に小脳の虫部や片葉の皮質にあるプルキンエ細胞は前庭神経核の活動を直接または間接的に抑制し、反射運動を調節している。小脳の抑制性の支配のおかげで反射は調節されて円滑な随意運動を円滑に行える。

 小脳のプルキンエ細胞は、脊髄小脳路を通って入力される筋肉の緊張や関節の位置といった固有感覚の情報や大脳からの運動指令などの情報を基に前庭神経核の活動を調節して運動に適した姿勢を実行している。そのため、
カイロの矯正やマッサージの刺激の様な固有感覚に直接作用する刺激や随意的な眼球運動を使って前庭神経核を抑制させ、反射を減弱させて、ムチウチ後の頚の緊張を緩和させる事も状況によっては可能である。例えばカロリックテスト中に一点を注視(じっと見つめる)させる実験では、三半規管をカロリックテストで刺激した状態で一点注視させると、大脳の前庭皮質の活動が低下する。これは随意運動によって小脳のプルキンエ細胞の活動が高まり、前庭神経核の活動が抑制された事で前庭神経核から皮質への投射が減少したことを示している。随意性を保つ事で反射を減弱させる事が出来る例と言える。

 鞭打ち損傷後の治療のためにカロリックテストは出来ないが、2009年のカイロプラクティック神経学のセミナーでDr.キャリックが講義していた頭位に合わせた随意的な眼球運動を使い、鞭打ち損傷後の頚の緊張が改善されたケースは結構ある。鞭打ち以外に、お年寄りの姿勢改善や酷い寝違えに対して改善傾向を示した。と言っても治ったわけではないせいぜい「マシになった」程度である。お年寄りの姿勢の改善に関しては即効性があった割に可塑性は全くなかった。

 「頚も動かせない」「頚を触れない」このような鞭打ち患者にとっては、少々マシになるだけでも偉い違いだ。少なくとも藁をも掴む「ただの藁」から「流木」ぐらいにはなると思う。カラー撒いて湿布だけ貼って帰すよりはよっぽど良いだろう。

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