今日UPされた押井守コラム『勝つために戦え!』は、押井守氏の職業観が垣間見れてオモシロイ。
野田
今回は若い人たちに向けて、アニメ業界への就職についてとかどうですか?
押井
うーん…若い人たちが入りたいところってIGかマッドハウスか4℃かジブリかって感じでしょ。でもそれって全部アニメーションの周辺なんだよ。プロダクションの中の正統派じゃないところ。
野田
トンガったことをやってるところに若者の目は向くじゃないですか。
押井
目立ってトンガったスタジオにはいればそういうことできるというのは大きな勘違いだよ。IGやジブリはそういうことを最初から目指してたんじゃなく、やりたいことやった結果そうなっただけ、それが大きな勘違い。
野田
それでも『サ●エさん』を作っているところよりは自分のやりたいことをできるんじゃないかという妄想が…。
押井
それは幻想です!そもそも就職って通過儀礼みたいなものでさ、そういう幻想を払拭する絶好のチャンスなんだよ。誰もアンタの夢や妄想や願望や理想にお金払う気はない。何に払うかというと、労働の対価として払うんだよ。余計な妄想を語る前にやることをやって役に立てと。それは運転することだったり、資料をコピーすることだったり。そういうのはジブリだろうがIGだろうが変わりゃしないよ。逆に手っ取り早く目立ちたいんだったら、サ●エさんやった方がいいよ。「僕はこういうのやりたいんだけど」って言った途端によってたかって潰してくれるから、その場で雄々しく戦いなさいと。トンガるっていうのはそういうことだよ。ただトンガるんじゃなくて、突き破ったからこそトンガったんだよ。突き破るものの無いところでどうやってトンガるのよ?サ●エさんの現場でトンガって見せられたら、一番目立つ。
http://www.production-ig.co.jp/contents/people/2005/11/post_11.html
アニメ業界において、サ●エさんは「サ●エさん業界」と呼ばれるくらい家内工業的アニメだ。そこにトンガった作家性や冒険など必要ない。あくまでも長谷川町子ワールドの継承。唯一の冒険といったらADK傘下になってからの、日本郵船のフネがギリだろう。(それも広告においてだが)
http://images.google.co.jp/images?hl=ja&q=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%83%B5%E8%88%B9%E3%80%80%E3%83%95%E3%83%8D&lr=&sa=N&tab=wi
そんなサ●エさんの現場で唯一トンガって見せたのが、若き日の三谷幸喜氏。タラちゃんが筋肉ムキムキになってオリンピックに出るという夢オチ話、『タラちゃん成長期』という脚本を書いたのだからw
しかしこの『タラちゃん成長期』、プロデューサーに「サ●エさんの心が分かっていない!」と激怒され、結局ボツった上に、三谷氏は番組まで降ろされた。その後の活躍は周知の通り。現在のサ●エさんのメインライターが大御所職人、雪室俊一&城山昇であるぎり、こういった無茶する若手の脚本は出てこないだろうなあ。