（BL/櫻葉妄想＋末ズ妄想）

（6−4）last『坊っちゃまとイタズラなキス』

「え？　……翔ちゃんっ！」

「カズっ！」

ベッドで抱き合う二人は、坊っちゃま達に気が付くと、執事だけが起き上がって微笑んだ。

二宮は、寝たままだ。

不安そうに黙って松本を見つめている。

「まあ、遅かったですね？　あなたが松本潤様ですか？」

執事は、上着を脱いで、タイも外している。

二宮は、少し破けた肌着だけを着たまま。

「おいっ！」

松本がベッドに駆け寄って、二宮に触れようとすると、その手を執事が手で払った。

「どうされるんですか？　二宮様に出て行かれた理由は何ですか？」

執事は、二宮が話していない事もわかっている様だった。

「カズが、勘違いしたからっ、喧嘩になっただけだよ！」

すると、二宮が起き上がって叫んだ。

「勘違いじゃないもん！」

そう言って、執事に抱きついて唇を奪った。

「カズ！」

「翔ちゃん！」（もはや悲鳴w）

執事は、されるままだ。

動いたのは、坊っちゃまだった。

「こらっ離れろ！　俺の翔ちゃんだぞ！」

「やだ」

そう言って、執事に思い切り抱きついて離れない。

それを、坊っちゃまと松本で引き離す。

執事は、坊っちゃまの剣幕に驚いて無言だった。

「カズ……いい加減にしろよ。冗談だったんだから」

「冗談？　冗談なら、目の前でキスしてもいいのっ？　それで怒ったら、逆ギレしてもいいの？」

「それは……ごめん、ヤキモチ焼く顔が見たかったから……でも、カズが他の男に優しいから」

「まあ……本当ですか？　二宮様？」

執事が、二宮の顔を覗き込む。

「……潤君が、いつも怒るんだ、浮気なんてしないのに。優しくなんて……普通にしてるだけだもん」

執事は、二宮の破れた肌着に触れて聞いてみた。

「こんなに、破れるほど何かなさったのでは？」

「それは……出て行こうとするのを止めて……」

「暴力は？」

「しないよっ、すぐ逃げるから……乱暴になっちゃうこともあるけど」

執事は、坊っちゃまを無視して二宮を抱き寄せる。

「こんな状態になるようでは、お返しできません」

「翔ちゃん……」

「ごめん……疑わないし、もう乱暴もしない。カズ、帰って来てくれないか」

二宮は、瞳を揺らせて黙っている。

「帰った方が良いぞ？　俺の翔ちゃんなんだから」

そう言って坊っちゃまが、執事からまた引き離して、二宮を強引に松本に返した。

「マー君の意地悪」

「マー君て、呼ぶなよ」（怒）

「ふふ……何かあったら、また、ここに来て下さい」

執事が、微笑んで二宮の背を撫ぜた。

坊っちゃまは、執事が優しいのは気に入らない。

松本の気持ちが、ちょっと分かった気がする。

――――

大騒ぎの末に、二宮は松本に連れられて、ちょうどやって来た大野と三人で帰って行った。

それを見送って、お茶の時間になった。

「翔ちゃん。あの子の事、気に入ってるんだね」

拗ねたように、美味しい紅茶に手も付けず、坊っちゃまが言う。

「ふふ……どうされましたか？　言ったでしょう？　私は、モテるんですよ？」

「返事になってないよ、翔ちゃん」

すると、執事はそっと坊っちゃまの顎を綺麗な指で触って、上を向かせた。

「な……なに……？」

綺麗な瞳を、伏せて執事が、坊っちゃまにチュッとキスをした。

「だ……だめって……言ってたのに……」

真っ赤になった坊っちゃまに、執事は、色っぽく微笑んだ。

「これは、私からではありません。二宮様からです」

「へ……？」

あの時、執事にキスをして二宮が小声で囁いた。

『マー君へのお礼とお詫び。届けてね？』

そう言って、口付けた。

キスは、するフリだけね？　と言ってたのに。

二宮は幼いのに、どこか自分に似てると、執事はこっそり思ってる。

「え……お礼？」

「そう仰ってましたよ」

坊っちゃまは、考えて真っ赤になったまま、言う。

「もう1回、お礼が欲しい！」

「それは、ダメ」

「えええ――――っ！」

さあ日が暮れてしまいますよ？　お茶を飲んで下さいと、妖しく美人執事は笑った。

まだ、坊っちゃまは、執事とのファースト・キスは許されないよう。

「翔ちゃんのイジワルっ！」

それでもキスは嬉しくて、坊っちゃまは、こっそり二宮に感謝する。

執事も、本当は坊っちゃまがヤキモチを焼いてくれないかと、二宮に恋人がいるのを口止めして煽ってしまった。

ヤキモチを焼く坊っちゃまは、とても可愛くて。

今度、また二宮に会う時は、執事からもお礼をしようと決めたことは、坊っちゃまは知らない。

坊っちゃまは、執事のキスで、頭の中がいっぱいだったから。

「坊っちゃまとイタズラなキス」＜end＞

執事さまは健気な恋する方ですが、怒らせるとなかなか大変なようです。

可愛い末ズちゃん（＋大野さん）は、このシリーズでも、たまに出没いたします。

AS＋MN（６−４）終「あしなが坊っちゃまと恋する執事さま」