（櫻葉BL妄想＋末ズ）

（6−1）『坊っちゃまとイタズラなキス』

　美しい姿と可愛い性格の相葉雅紀坊っちゃま。

その彼に影のように使えるのは、美人執事の櫻井翔という人だ。

　坊っちゃまとは、古い付き合いのある家の長男の大野智が、突然連絡してきた。

まだ早朝で、この家で起きているのは執事だけだった。

「随分、お早いお電話ですね？　坊っちゃまは、まだお休み中なのですが」

電話に出た執事も、困惑気味だ。

「あ、翔ちゃん？　良かった、マー君よりも話が早いや」

「何か、ありましたか？」

「ちょっと、俺の幼馴染を預かって欲しいんだ」

「はあ、いつからでしょう？」

「今から」

「は？」

どうも、恋人と喧嘩した幼馴染が、大野のところへ逃げて来たらしい。

だが、恋人は大野の事は良く知っているから、すぐバレそうだ。

匿ってると分かると、大野としては困るらしい。

それで、相葉雅紀坊っちゃんに、頼み込んできた。

「ちょっと、坊っちゃまに相談して参ります」

「でも、もうすぐ着くと思うよ？　車で行かせたから」

言い終わる頃には、外に車の停車する音が、開けた窓から聞こえてきた。

「じゃあ、お願いねっ」

さっさと、電話を切った大野に、執事も流石に眉を顰めたのだった。

――――――

「ふぇ……？　だれ……？」

目が覚めた坊っちゃまは、驚いた。

見知らぬ小柄な青年が、朝食のテーブルへ先に座っていたからだ。

「初めまして。二宮和也です、お世話になります」

立ち上がると、ペコっと、お辞儀をして挨拶する。

坊っちゃまは驚いて、執事に尋ねるような視線を向ける。

「え……っと。翔ちゃん……？」

「大野様の坊っちゃまが、しばらく預かって欲しいと仰って」

「大野さんの？」

恋人かと思ったが、幼馴染だという。

「すみません……」

照れ臭そうに、謝る姿は幼く見える。

家出して来た理由は、なぜか言わないでと、執事が指示したから言わなかった。

「そう……気にせず、ゆっくり泊まっていくと良いよ」

ちょうど、予定の無い日曜日。

お互い退屈しのぎになりそうだ。

「さあ坊っちゃま、二宮様も、たくさん召し上がって下さい」

執事が美しい顔で笑って、料理を並べてくれた。

「あ、フレンチトースト。これ美味しそう」

「大野様が、和也様の好みも教えて下さったので、ご用意しました」

「ありがとう……大野さんが言ってた完璧な執事様って本当だね」

嬉しそうに二宮は、食べ始めて。

それをニッコリ見つめる執事。

二人が、お似合いに見えて、坊っちゃまは、ちょっとモヤモヤした。

「……？　坊っちゃまは、お嫌いでしたっけ？」

ぶすっとして、食べない坊っちゃまに、執事も気が付いた。

「今日は、違うのが良いな」

「わかりました。和食が良いですか？」

「え……と。いや、これで良いよ、ごめん」

渋々、食べ始めたけど、美味しい味は、感じなかった。

坊っちゃまは、いつも、二人きりだったから、知らなかった。

執事は、他所の坊っちゃまにも優しいことを。

そんな二人を二宮が、微笑んで見つめていた。

（つづく）

このエピを載せるのは迷ったんだけど、載せました。

やきもち焼きな可愛い坊っちゃまたちのお話です。

AS＋MN（６−１）「あしなが坊っちゃまと恋する執事さま」