語り:MJ
そういやぁ
声、聞いてないな
時節柄チョイチョイ会えない事も
影響しているせいなのか、用事は
スマホで済んでしまう事が増えたからか
今となっちゃそれすらできないでいるけど
元気、かなぁ
こうなることは分かっていた
きっと連絡も途絶えるって
そんなことはないって皆んなは言ってたけど
近況を知る人は多分誰もいない
あの人ですら例外じゃない
いつしか触れないようになっていった
自分たちは特別だって
思っていたかったから
一番あの人に近いと思っていた人にさえ
俺らと同じ状況下だなんて誰が想像しただろう
仕事でしか会わなくなっていた俺らも
いい加減気付く
今までと違う雰囲気に
私情を挟まない完璧主義が
壊れていく様はことの重大さを物語る
唯一の救いは、
かければ鳴るスマホの発信音
俺らとあの人をかろうじて
繋いでいてくれている最後のアイテム
既読のつかないメッセージ
かけても応答のない無機質な音
らし言っちゃ、らしいんだ
もう縛りつけるものはないんだから
一緒にいる時間が当たり前のように
思って疑わなかった俺らの誤算
どこにいたって
絶対にこの絆は切れたりしない
そんな夢物語だけが美化されていく
ねぇ、どこに居るの?
声が聞きたいよ
