いつだったか
俺が初めて書いた手紙を
大切そうに持っている翔ちゃんを
見たことがあった
ボロボロになった
それをきれいに畳んでいる姿からは
到底想像もできなかった過去
まぁ、
手紙というにはおこがましいくらいの
代物だったけれど、俺にとっては
多分最初で最後の
いや、一世一代の
・・・・恋文
だったんだ
ある時から
翔ちゃんの様子が変わった
なんとなく距離を置かれているような
そんな感じがしたけど
時々見せる眼差しが俺を安心させていた
ずっと一緒にいられるんだって
翔ちゃんにとって俺は特別なんだって
自惚れもいいとこだったけど、
焦ってたのかもしれない
離れていってほしくなくて
翔ちゃんが俺の呼び方を
コロコロ変えても気にならなかった
どう呼ばれても
翔ちゃんが呼ぶんだからそれで満足だった
でも、『大野さん』って
呼ばれた時だけは一瞬戸惑った
そんな時だった
手紙を書いたのは
そんな感情のまま書いた手紙じゃ
伝わるわけないんだよね
言葉は難しい
ましてや俺の拙い言葉なんて
頭のいい翔ちゃんじゃ
一周回って何言ってるの逆に
わかんなかったのかもしれない
タイムリミット・・・
なぜ翔ちゃんが今でも持っているのか
聞けないまま
俺は居心地のいいその場所から
離れた
翔ちゃん、俺に言ったよね
『ゴメン』って
見事玉砕した俺は
仕事仲間に徹した
それはそれで楽しかったし
何よりそばにいられるだけで
よかった
俺の淡く苦い思い出
毎年この時期になると
なんでだかよく思い出す。
それくらい俺にとっては
特別な日になったんだ
ねぇ、なんで今でも持っているんだ
俺の・・・・
恋文・・・
いつか
聞いてみてもいいよな?

