「おい、俺にお礼の一言は無いのか?」

 

 

 

 

 

 

 

日差しが差し込む

馴染みの場所....

いつのまにか

馴染んでしまった場所...

 

 

 

 

 

あれ以来

イカツイ奴が俺の顔を見るたびに

それを言う

クソまずいコーヒーをいれながら...

 

 

恩着せがましく

ネチネチと

 

 

 

隣では涼しい顔をして

そのクソまずいコーヒーに

口を付ける金髪・・・

なかなか啜れない

熱いものは苦手らしい

 

 

 

「...あっちぃっ、」

 

 

小さい口をとがらし

ちょこちょこ飲む姿は

同年代とは思えない

 

 

「...まっじぃっ」

 

 

 

『熱い』と『不味い』を繰り返し

ちびちび飲むコーヒは

果たして旨いもの何だろうか?


俺が言うのもなんだが

 一体、どうやったら

クソまずいコーヒーがいれられるのか

謎なんだ

俺でさえ普通の味はするというのに

 

 

イカツイ奴は豪快に笑って

 

「腹に入れば皆同じだ」

 

と、まずいコーヒーを

旨そうに飲み干す

 

 

隣で笑う金髪は

coffee makerが可哀想だと

憐んでいる

 

 



 

あの日

俺は言いたいことがたくさんあって

聞きたいことだって山ほどあって

二人きりになりたくて

 

無我夢中で走った

 

 

だけど・・・

金髪はそんな俺の思いを

知ってか知らずか

いつだって

予想を遥かに超えていく

 

 

....突然始まった挨拶

 

海外でよく見る

『再会』という名の

挨拶を...

金髪はごく自然にしてきた

 

 

『ひさしぶりだから、ちょっと軽めにしてみた』

 

 

....軽めって、

 

 

 

相変わらず

飄々と言い放つ

 

しまいには突然のことで

固まって動けなくなっている俺を見て

ケラケラ笑いだし

 

『変わらないね・・・ 』

 

 

そう言って

今度は眩暈がしそうなほど

濃厚な挨拶をしたんだ

 


日本で、しかも男同士で

濃厚な挨拶を見た一般人は

どんな反応をするのやら

...言わずとも知れた事なのだが

どうやら俺には

その行為がしっくりくるようで

驚きこそすれ、ただ

金髪を感じていたいと思っていた



色んな意味で限界だった俺が

その後、ぶっ倒れたのは誰にも言っていない

 

初めてあった時があまりにも衝撃的で

断片的ではあるが

忘れられない記憶となって

記憶に刻まれている

それをさらに上書きされようとは

思いもしなかった


会えなかった時間を取り戻すかのように

何度も何度も印を付け合う

今度は正真正銘の素面だ

生涯きっと忘れることはない

濃密な時間を過ごしたのだ

 

 

目覚めた時

心配そうにのぞき込む金髪の顔と

その顔をみて安心する俺

感じる痛みに感動すら覚える

 

 

あの時に止まったかと思えた時間は

 ゆっくり動き出していた

珍しくもないBBQは俺にとって

人生を変えた出来事となった



そこから始まる二人の時間

まだお互いをよく知らないからこその

楽しみと期待と不安


モヤモヤ、イライラ、

チクチク、ワクワク、ウキウキ

...ドキドキ

金髪が巻き起こす

不思議な感情の先にあるもの

それが多分

特別なんだって

気づいちゃったから

 

初めて会ったあのBBQで

俺は金髪に惹かれていたんだと思う

それが恋なのかはよくわからないけど

俺の心臓は金髪にしか騒がない

ドキドキと脈を打つ感覚は

金髪にしか現れないから

そう認めざるおえないんだ

 

 

差し込む日差しが

金髪の....

俺のサトシのサラサラな髪を

さらに金色に輝かせる



チラリといかつい奴に視線を移すと

大きなため息をついて

俺にいつもの嫌味を言うかと思いきや


「お前はもう少し日焼けしろ、さすれば

キスマークが目立たなくなるぞ」



「///////ぅおい!!」



慌ててうなじに手を当てると

ひんやりした指先がそれを阻止する

代わりに鈍い痛みが走ると


「ばかだなぁ、白い肌に跡がつくから

いいんだよ、毎晩どうやって咲かせるか

考えてみろ?興奮するから!」



はっ?



「.......大野、お前やっぱ獣だわ!」




えっ?



「翔くん限定のな!」



へっ?



豪快に笑って部屋を出ていく

イカツイ奴の後ろ姿が消えると

ゆっくり俺に近づくシルエットが目の前で止まる











...BBQの続きをしよう❤︎



そう口元でささやきながら

今日も俺らは挨拶を交わす












end