1話前
「・・・おい、飲まないなら
コップくらい片付けろよ!」
イカツイ奴の小言に耳を傾けることなく
金髪が座っていた席に陣取り
ボ~っと日当たりのいい中庭を眺めていた
つい最近まで
金髪が見ていたであろうその景色
だが、
居るのといないのとじゃ大違いだ
「・・・ハァ~」
「おい、人の話はチャントキケ!!」
・・・うるさい
なんてね。
ガラは悪いが
イカツイ奴もなんやかんやと言っては
俺によくしてくれる
同情されているのか、とも思ったが
金髪のことを共有できる数少ない輩
といったところか?
それと・・・
金髪の取り巻き?も
よく声をかけてくるようになった
ロン毛の顔の濃い奴
サイドを借り上げたグラサンのトッポイ奴
校内でグラサンって・・・(笑)
それと、マサキとカズと・・・
イケメン。
この3人が思いのほか奇妙な
関係性で、特にカズが珍しく
その掛け合いを楽しんでいるように思えた
変わるものだな・・・
以前のカズはどことなく
人を寄せ付けない印象が強くて
滅多に笑わなかった
それが今じゃ、マサキの隣で
コロコロ笑う。
その光景を優しく見守るイケメン。
微笑ましいじゃないか。
それに比べて
俺は。
「・・・ハァ〜」
何度目だ?ため息しか出ない。
「あぁ〜ったく、辛気臭い!」
頭を掻き毟りながら向かい側にドカッと
腰を下ろし相変わらずクソ不味そうに
コーヒーを飲む
金髪が淹れたら美味いはずなのに
淹れ方1つで味も変わる
心持ちで、俺も
変わるのかもなぁ。
俺は、結局
金髪には会えず、もちろん
会えるなんて思ってもいなかったが
いや、もしかしたら会えるかも・・・
なんてどこかで思っていたのは確かだ
実際、『どこにいる!』
と、目の前でクソ不味そうに
コーヒーをすするイカツイ奴に
食ってかかったのは俺だし。
あれから
・・・・・なんというか、
この騒がしい胸の内が
なんなのかを知ることとなる。
いなくなって改めて気付くアホさ加減に
自分でも呆れ返ってる
どこで何をしているのか
それ以来聞くのをやめた。
俺に伝えない理由があったはずだから。
ふに落ちないのは
マサキもカズも知ってた事
金髪と距離を作った俺に
話す必要は無い。。。
そりゃ当然だ。
だとしたらだ、
あの最後の言葉の意味ってなに!?
イカツイ奴に聞けば
なんでも教えてやる!とばかりに
喋り出すだろう。
それがわかるから。
そうなると、ひねくれてる俺は
絶対に聞くもんかってなるわけで
ここまでくると最早、大間抜けの
何者でもない。
金髪が最後に言った言葉を
俺はどう解釈する?
また、揶揄われているだけかもしれない。
そんな押し問答をこの場所で
何万回したことだろう?
真意を聞いてみたい
いや、違うな。
もう一度俺の目の前で
いって欲しいんだ。
日差しの角度が変わり
背中に注ぐ温もりにいつしか
まどろみ始めていた。
金髪の最後の言葉が
聞こえてくるような気がした。

