一つ前

BBQは恋の始まり#31









 

マサキの言いかけた言葉を

最後まで聞くのが嫌だった・・・

 

思っていることが

本当になったらと思うと

いや、そうじゃなくても

きっともう金髪は・・・

 

そう思えば思うほど

いてもたってもいられず

かと言って・・・どこに向かえばいいのかも

わからない、ただ、身体が勝手に動いていた

 

金髪に逢いたくて


逢いたいはずなのに


向かった先は・・・・



 

金髪と一緒にいたイカツイ奴のところだった

 

 

 

 

あいつなら事のいきさつを知っている

そう、漠然と思い立った

訳の分からないイライラが同時に沸き立つ

 

 居場所を探し

勢いよく研究室の扉を開けば

ゆったりと金髪の座っていた席に腰を掛けて

コーヒーを煎れている奴が目に飛び込んできた

 

その姿が猛烈にむかついて

真っすぐにそいつに向かった

 

一瞬、驚くような顔をしたが

すぐにニヤッと口角をあげて

俺に話しかけてきた

 

「・・・よっ、相変わらず不機嫌だな」

 

「・・・うっさい、金髪はどこにいる?」

 

「・・・あぁ、ここにはいないよ」

 

「そんなの見りゃわかる、どこに行ったのか聞いている」

 

「まぁ、そう怒鳴るな、・・・大野からは、なんて聞いてるの?」

 

 

・・・・・なんて聞いている?って

そういえば何も聞いていない

電話が切れる瞬間の言葉しか聞こえなかった

 

 

「・・・ふんっ、言いたいことだけ伝えて行きやがったのか?」

 

おもむろにもう一つのカップを手にとると

頼んでもいないのにいそいそとコーヒーを注ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まぁ、座って落ち着かせろ」

 

 

目の前に自分のもののようにカップを置き

座れと顎で促す顔がまた更にいらだたせる

 

 

「結構です、それより質問に答えて!」

 

 

「そう焦るな、焦ったところで今日はもう間に合わん」

 

 

ズズズッっと不味そうにコーヒーをすすり

横目で俺を見上げる顔には

優越感に浸った余裕がそこかしこに見える

 

 

・・・・・今日は間に合わない???

 

 

さっきまでの焦燥感がその言葉と共に

一気に身体から抜け落ちた

 

 

間に合わない ・・・・

そういや、マサキも

なんか言ってたっけ

 

 

 

「・・・・成田だ」

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

予感はしていたが実際に聞くと

心臓がキュウキュウ音を立て始めた

 

 

いれたてのコーヒーの香りが

さらに鼻の奥を刺激する



 

ふらふらと、 窓に近寄り

随分と高くなった空を見上げた


一筋の飛行機雲を見つける

 

 

 

 

 

 ナリタ・・・



細く長く伸びる 飛行機雲

その筋が消えるまで

ずっと空を見ていた