けたたましい音を立てて

翔ちゃんが飛び込んでくる

滅多に見たことがない焦燥しきった顔

 

・・・・・大野さん、か

その顔が答え・・・なんだろうね(苦笑)

 

 

 

開口一番その大野さんはどこか?と聞いてくる

ムスッと黙ったままの俺から

すっと隣の相葉さんに視線を移すと

相葉さんが少しだけ眉毛を下げて翔ちゃんに向き直る

 

 

「・・・・・今ねぇ、丁度、雲の上?」

 

 

「はっ??」

 

 

「・・・・・えっ?いや、だから雲の、」

 

 

「何言ってんの?だからどこ??」

 

 

何度か繰り返す押し問答・・・

 

 

 

翔ちゃん知らないんだ

大野さんの・・・行先

いい意味、言い逃げされて

(笑)

 

 

今にも飛び掛かりそうな翔ちゃんの手首を

相葉さんがやんわり包み

もう一度ゆっくり伝える

 

 

「・・・・・大ちゃんは、今日からねぇ、・・・えっ?ちょっと?」

 

言い終わらないうちに

翔ちゃんは駆けだしていた

その背中を二人で見送る時間

 

なんだろう・・・ちっとも苦しくない

何でか今までと違う

何かが俺の中で変わったのか?

 

視界からいなくなるまでじっと見ていると

すぐそばで俺を見つめる視線に気づく

 

 

「・・・話途中で行っちゃった・・・」

 

「せっかちですから、基本。」

 

 

あまり見たことのない翔ちゃん

それを引き出すのはいつも・・・俺じゃない

 

 

「・・・・・結構、熱血タイプなんだね、(笑)」

 

「・・・そうですね、俺も初めて見たかも」

 

「ねぇ、奇跡ってあると思う?」

 

「はい?」

 

 

話が飛躍すのは知っているつもりでも

相葉さんの思考回路は俺の予想を超えていく

 

面白い人なんだよね、相葉さんって。。。

 

 

 

「だからさ、翔ちゃんの走っていった先に奇跡があるかもってこと(笑)」

 

「・・・さぁ、どうだろ。神のみぞ知るってところかな?」

 

「そう!それそれ!!」

 

 

 

二カッと笑い

満面の笑みの相葉さんを見ていると

つられて笑っている自分がいる

 

無意識に人って笑えるんだ

氷のカケラが溶けていくように

心が温かくなっていく

 

相葉さんてほんと、不思議な人

ちょっとトンチンカンで空気が読めなくて

無駄に元気で、だけど一人でいたくない時に

必ずいてくれる

偶然でもそれが嬉しいと思った

 

 

「ちょっと、何二人の世界作ってるの?俺も混ぜてよ」

 

 

高級なコロンの香り

いつの間にか背後に香り立つ濃いめの顔

 

 

その声で臨戦態勢に変わる相葉さん・・・

潤くんとは馬が合わないらしい

理由はよくわからない

 

 

・・・・いや、今は知らないでいたいのかも(苦笑)

 

急に賑やかになる俺の周り

二人のやり取りを楽しいと思う自分

 

 

 

翔ちゃん、奇跡ってひょっとして

すぐそこに転がっていたりするかも

知れないよ?

 

 

間に合うといいね・・・

 

 

 

偶然が重なる奇跡

あの時のBBQにも

きっと意味があったんだよ

 

 

 

きっと・・・