カズがゆっくり俺から離れる

薄茶色の瞳が俺を真っすぐに見るから

俺も視線を外すことができないでいた

 

 

 

「・・・・驚かないんだ」

 

 

 

いや、十分驚いている

声が出ないのがその証拠で・・・・

 

「ぁ、大野さん、あの人の噂は嘘だから」

 

 

「・・・えっ?」

 

 

カズから出た金髪の名前が

俺の心拍数を一瞬にしてあげる

それを見越してなのか

クスっとカズが笑って眉毛を下げるだけ下げ

力なく俺を見つめる

 

 

 

「BBQでさ、・・・・大野さんに頼まれたんだ」

 

「頼まれたって・・・な、何を?」

 

 

「ん?翔ちゃんを連れて来いってさ」

 

 

・・・・・・・。

 

 

俺の事連れて来いって?

金髪とはあの日が初対面だぞ?

 

頭の中でカズの言葉がグルグル

駆け巡る・・・

 

 

 

「・・・眠り姫。見つけたって言ってたよ」

 

 

少しだけ寂しそうに笑って見せると

またゲームを手に何事もなかったかのように

ピコピコと軽快に電子音を鳴らし始めた

 

それっきり話らしい話もなく

気まずい空気だけが漂う

 

 

なんだこれ?

 

俺はカズに何をさせたんだ?

中途半端な俺の感情が

空中分解のごとく

木っ端に微塵に吹き飛んだ

 

 

その中に見えてきたもの

それはなぜか金髪の笑顔だった