ある日のこと
智くんの言った一言が
俺の頭から離れない事実
『翔くん今度釣りに行って
キス釣れたら、それごとに
チュウしてやる』
大胆な発言はその後
聞かれることなく過ぎ
今となっては
覚えているかすら
怪しいもので・・・・
だが
好きなことに夢中になる姿は
何物にも代え難く
見ている側にまで
楽しそうな雰囲気が伝わってくる
「おっ、これいいな!」
ソファーに寝そべり
お気に入りの雑誌を眺めて独り言を言う
そんな様子に
思わず問いかけてしまう
「・・・楽しそうだね」
「うん!」
「・・・だよね」
「ん、どした?」
「ははは、なんでもないよ」
当たり前のことを聞いたのだ
当たり前の反応が返ってくることも
承知の上だが
なれど
そこに自分の居場所がない
と、なれば話は別なわけで
嬉しそうに
その日を待ちわびる横顔を
恨めしくみつめる
大人気ない自分
一緒に行きたい!
とは言い出せず
悶々とした日々を過ごして
はや半年
そろそろ我慢も限界
是が非でも休日を合わせて
願わくば、
キスをしながら
キスを釣りたいぃぃぃぃ!
「おっ、いい具合にしなる!」
にこやかにビュンビュンと竿を振る
・・・・・・・・!!
もしかして
もしかする?
今がチャンスか?
「さと・・・」
「でかいの釣ってくるからさ!」
・・・・。
一瞬の躊躇が招いた
悲劇。
変わらない愛らしさの
智くん
変われない超絶ヘタレな
俺
俺は思う
これはこれでバランスがいいのだと
・・・しかし
いつになったら
お揃いの道具使えるんだ?
キスはいつまで旬なんだ?
船上キスはいつまでお預け?
密かに買っておいた
魚肉ソーセージの賞味期限が
わずかなことは言うまでもなく
手にとってブンブン振っている
智くんと竿を見つめて
しばしボーッとしていた
すると突然
くるりと振り向き
トコトコと近づく天使
「そうだった、
ちっこい竿も出さなくちゃ」
えっ、
あっ、
うっ、
うわぁぁぁぁ/////////
※自主規制
ちっこい竿に食いついた
とびっきりの獲物は
一晩俺の上をピョンピョン
跳ねてシーツの波間に消えていった
前言撤回!!
こんな釣りなら
いくらでもWelcome!!


