どこまで逃げても
捕らわれる・・・
縛られる・・・
なら、いっそのこと
自ら飛び込んでみようか・・・・
光の世界に
花の隣にいくために
暗い世界は俺のすべてを
受け入れてくれる
光はその全てを
否定する・・・
身体につけられた印は
穢れの象徴・・・
洗っても洗っても消えることはない
壊れていく心は
いつしか何も感じなくなって
ただ息をしているだけの世界
食べるための代償は
この身一つ
目の色変えて貪る連中と
この人も同じだと思っていた
「どうした?行き倒れか、」
その言葉になぜだか惹かれた
じっと俺の目を見て
逸らさなかったから
その瞳の奥に一瞬見えた
・・・・・闇?
「飯・・・食うか?」
「・・・・・・・・・。」
「なんだ、口きけないってか?」
「・・・・・・・。」
「飯、食うならついてこい、俺の家の前で
死なれるのはゴメンだからな(苦笑)」
そう言って笑った顔が
作り物だってわかったから?
どこか俺と似ていると
思ったから?
なんでかわからないまま
こうして始まったこの人との時間
なんで・・・この人の傍は
落ちくのだろう?
どんなに悪態ついたって
真正面から俺を見てくれる
話しかけてくる声のトーンが
あまりにも柔らかかったから
触れられたところから伝わる体温が
あまりにも温かかったから
だから・・・
ほんの一瞬でもいい
この人を手に入れたいと
思ったんだ
初めてだった・・・
自分から他人の身体が欲しいと
思ったのは
初めてだった・・・
自分から他人の背中に
腕を絡めたのは
見慣れたはずの漆黒の世界が
月明りで青く輝くのも・・・・
初めてだった
俺・・・・もう一度
生きてもいいのかな?
この人に・・・この時間を
忘れてほしくないと
強く願った
「雪月花・・・・」
「・・・・なんだ?それ」
眉間に皺をよせ
聞き返すその顔に
声が届いたことを確認する
いつもの無関心にホッとして
いつもと違うザワツク心臓を
キュッとつかむ
何かが変わった瞬間だった
明日、ここを出ていく
生まれ変わるために
俺のもう一つの誕生日にするために
あの鈍そうな頭に
俺の思い届くかな・・・・
雪月花・・・・




