一際大きな花火が上がる

 

ふと背後に気配を感じ振り向くと

 

潤と・・・翔くんの式

 

あぁ、名前を付けられたって

 

憎まれ口きいてたっけ・・・・

 

 

 

 

「・・・サトシの気の流れが変わっている気づいているか(笑)?」

 

 

 

・・・・・・・・。気づいているよ

 

俺が一番戸惑っているのだから

 

 

 

 

潤が俺の手に何かを掴ませる

 

 

 

「我の先代の主が

好きだったものだ・・・・

今の主も好きだと思うがな」

 

 

 

 

 

そういうと

少しだけ・・・寂し気に視線を落とし

 

口うるさい翔くんの式を連れ立って

 

気配を消した

 

 

 

「・・・・これって、じいさんの」

 

 

潤から渡された袋に

 

昔じいさん行きつけの喫茶店で

 

必ずもらってきた

 

洒落たマッチ箱が入っていた

 

ライターを頑なに

使おうとしなかったじいさん・・・

 

マッチで擦る焔は柔らかくて

好きだとよく言っていた

 

それともう一つ

 

どうやって用意したのかわからない

 

今夜の最大級の主役が入っていた

 

 

 

「潤・・・お前、馴染み過ぎだ(笑)」

 

 

となりで、花火が上がるたび

 

子供の様にはしゃぐ翔くん

 

いつも見慣れているはずの

 

翔くんの笑顔に

 

 トクンと胸の奥が熱く脈を打つ

 

 

 

無意識に

 

そっと伸ばした指先に触れる

 

翔くんの柔らかな髪

 

 

セットをしていないからサラサラで

 

余計可愛さが増す

 

 

 

金平糖はないけれど

 

たまにはいいかな、、、、

ご馳走になっても

 

 

「翔くん・・・・」

 

 

ニコニコしながら振り向く翔くんに

 

袋を渡す。

 

両手で受け取り中を見ると

 

今までにない笑顔で微笑む

 

そんな翔くんに俺は初めて

 

余裕のないキスをした

 

 

 

 

{FDBF629D-C967-440E-888F-88EF817382E3}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュ〜〜〜

 

ヒュ〜〜

 

空気を切る音がかすかに響き

 

 

数秒後大きな華を夜空に咲かせ

 

 

後から遅れてきた音に紛れ

 

 

翔くんに唇を合わせたまま

好きだよと伝えてみた

 

 

言霊ではない

 

俺だけの言葉として

 

 

 

聞こえてなくとも

 

今はこれで満足だから

 

 

 

 

不意の事に両手を塞がれた翔くんは

 

俺にされるがまま、それでも

 

嬉しそうに瞳が笑っている気がした

 

 

 

それと・・・

 

袋のなかの思い出も

 

二人の思出にかえよう

 

 

 

 

{ABE6B64C-35B1-468A-B66D-7CCCE8306904}


 

 
 
手に届かない大輪の華も綺麗だが
 
手に届きそうで届かない可憐な華も
 
 
悪くない
 
 
じいさんが好きな理由が少しだけ
 
分かる気がした。
 
 
 

 

 

{EB4BC954-769A-47E9-A232-82C6A9D13374}
 

 

「綺麗だ・・・」