風の便りの
とだえたわけを
誰に聞こうか
それとも泣こうか
うすぼけた記憶を呼び起こし
夕べの出来事を整理する
あの人は・・・病院にいけたのだろうか?
かなり血が出ていたから
で、俺は・・・・どこに今いるのだろう?
この、非現実的な場所にはどうやって
来たのだろう?
身体を起こし足りない脳味噌を
フル回転させてはみたものの
行きつく答えなど見つかるわけもなく
ただ、部屋の中をぼんやり見回していた
「・・・・・やっと起きたか」
声のする方を見ると大きな扉が開いていて
右の頬に絆創膏をはった年は俺と同じか少し下
そんな感じの男が立っていた
っぁ・・・・・・・
思わず息をのむほどの
艶やかさ
トクンと胸が鳴る・・・・
生まれて初めての感覚に
思考がついて行かない
「・・・・・・なんだ、返事もできないのか?」
それでも声が出せないで
じっとその人に魅入ってしまう
それほどに・・・・心奪われていた
呆れたような仕草で俺に近づくと
ひんやりとした感触が右の頬に触れた
冷たい手・・・・
それと・・・・高級な香り
「だいぶ・・・・腫れは引いたが、まだ少し痛むかな?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・日本語わかるか?」
ムッ・・・・
身なりはいいが・・・・
性格悪そう
ほんの一瞬でも見惚れた俺が間違い!
「あぁ・・・・ここ?酔って絡んだ男に殴られたからな」
「・・・・・奇遇だな。俺も酔って絡まれた男に傷をつけられたんだ」
そういうと口を真一文字に結びジロリト睨みつける
「・・・・・なに?」
「覚えていなのか?」
「なにを?」
「・・・・・・・ふぅ、酒に飲まれるならもう飲むな、」
「よ、余計なお世話だ・・・いくら飲もうが俺の勝手だろ」
「・・・・・・クソッたれだな(笑)」
「へっ?……ぷっっっっ、」
その身なりからは想像もつかない
御下劣な言葉に思わず吹き出してしまった
「・・・・お前、名前は?」
「はぁ?何で名乗らなくちゃいけないの」
「一晩泊めてやったんだ、お礼ぐらいは言ってもらわないとな」
「・・・・あぁ、翔・・・・櫻井翔」
「翔・・・?」
「な、なんだよ・・・・」
「いや、・・・・いい名だ」
そういうとどこか寂し気な瞳で俺をじっと見つめる
その瞳があまりにも綺麗で・・・・
目が離せないでいた
俺とこの人の最初の出会いはこうして
始まった・・・・・
