タクシーが止まった





触れていた指先がゆっくり離れていく


ずっとその場所に手を置いていた翔くん


ひっこめることが出来なかったか?


それが、妙にいじらしく感じた(笑)




俺に促されるまま車を降りる翔くんと目が合う


少しだけ不安気に瞳が揺れてる


心配すんなって、まだ、何にもしないから



多分・・・・





降りた目の前には「大野」の表札

それを見た翔くんが、固まってる

当然か・・・・フフフッ

初めて連れてきた


独り暮らしでもしてたら・・・・もっと

ムードだせるのに


残念!




「・・・ここ、俺んち。散らかってるけど」



「・・・・あの、これって?」



「ん?あぁ、今日誰もいないから、ゆっくり話せると思って」


「・・・・・話せるって?」


「・・・・翔くんも、話あるんじゃないの?」


「・・・・えっと、あの、僕は・・・・」






しどろもどろになる翔くん・・・


いつまでもたっても拉致あかない


思い切って背中を押して中に招き入れる




慌てて靴をぬぐ姿も・・・・


可愛い・・・・・





「・・・お、お邪魔しま~す・・・」



「どうぞ~(笑)」



少しだけ翔くんの顔が綻んだ


そんな顔も・・・可愛い・・・ふふっ









部屋に入っても隅っこの方で固まっている


もう一度声をかけるが、


すでに、声は届かない様子で・・・・


珍しいものでも眺めるように

クリクリした瞳だけを忙しなく動かしていた





目の前に・・・俺が行っても

気づかない・・・・



部屋の中が興味津々といったところか?


なんだか俺を見られているようで


恥ずかしい(照)






二人きり・・・・か






実家暮らしが


今日だけは恨めしく思った