朝の目覚めがすこぶる良い今日この頃・・・
智くんへの想いは増すばかりなのだが・・・
心なしか・・・柔らかな笑みが増えた気がするのは
俺の・・・妄想がそう見せているせいなのだろうか?
布団の中の温い感触がたまらなく離れがたい季節になってきた
なかなか起きられないでいる俺を起こしに
聞き慣れた声で愛しき人が名前を呼ぶ時間が迫る・・・
トントンッ
「・・・・翔くん、起きたぁ?朝ご飯できてるよ」
ぬあぁ~・・・・今日も俺をその声で呼んでくれる!!!
も、もう一度・・・聞きたい!!
だんまりを決め込む俺は・・・
三度、その声が聞きたくて・・・・
じっと息を潜めて待つ!
(智くん、もう一度だけ呼んでくれ~)
ワクワクしながらそのときを待っていると
カチャッ
ん?・・・・・
ドアが開く音がして
スリッパのこすれる音が近づいてくる
ふわりと漂う・・・・柔らかな香り・・・・
突然、耳元で響く・・・・
甘いささやき声に一瞬で体が硬直する!
「・・・・翔・・くん、お・は・よ・う 朝だよ・・・」
はぁ~・・・・
なんたる幸せ!!
この贅沢なる一時を俺はなにがあっても死守する!
ベッドの端に腰をかけたのか、
ゆっくりそちら側に傾く身体
クスクスと笑う声が聞こえる
毎日でも・・・・起こされたい!!!
そう思うことは・・・
罰当たりなのだろうか????
不意に、近づく甘い声・・・
「・・・・狸さん・・・そろそろ起きないと、狼さんがやってくるかもよ?」
跳ねる鼓動・・・・
言葉の意味など考える余裕もなく
・・・・・・・ん?
いま、狼って言った?
「・・・・・・・。狼?」
あはははっ・・・と、声高らかに笑う智くんを
寝起きの顔で眺める
「・・・・狼って・・・赤ずきんちゃんを食べた、あの狼?」
「・・・そうだよ、あまりにも可愛くて食べちゃったあの狼だよ」
「・・・・食べるの?」
「・・・・食べてほしいの?」
「・・・・・・・・。(照)」
「・・・・・。(笑)」
ははははっ・・・・俺、朝っぱらから何やってるんだ?
智くんの思わぬ言葉に無情にも反応して
布団から出られなくなってしまった俺は・・・・
恨めしそうに智くんを見つめることしか出来ない!
そんな俺を、眩しい笑顔で包みこむ・・・・
「・・・・翔くん、早くおいでね、先に食べちゃうぞ、あ・さ・ご・は・ん!」
肩が揺れるほど笑いをこらえる姿もまた・・・・可愛くて・・・
って・・・・俺、かなりの重症か?
早く行きたいのはやまやまなのだが・・・・
如何せん、動くに動けず・・・・
それは身体も、もちろんなのだが・・・
いつまでも言えずにいるモヤモヤした感情の置き場に
困り果てていることもあり
思うだけでもいいと思っていたが
こうして近くに智くんを感じる程
欲が出る・・・・
だが・・・・臆病なおれは・・・
動けに動けず!!
ぬあぁ~!!、いっそのこと赤ずきんになりたい!!
智くん、俺は赤ずきんになりたいと強く願っている!
息子をなだめすかし
朝日さし込むダイニングへ向かった
狼さんの待つ・・・
贅沢な場所へ・・・・・
「もうちょっと・・・頑張ってみようか・・・俺・・・」
自然とそんな風に思えてきた
ある冬の朝の一コマ・・・・・だった




