「翔くん短冊書いた?」


「ん?もう少し!!」


「・・・いったいいくつ御願いごとするの(苦笑)」


「えっ?たくさん書いちゃダメなの?」


「・・・・ダメじゃないだろうけど、ふふっ、まぁいいんじゃない」





今日は七夕・・・

とはいってもあともう少しで

終わってしまう・・・・



俺の仕事が思ったよりも押して約束した飾りつけに手間取っている


智くんと二人でせっせと・・・・いや、二人じゃないよな


どう見ても・・・あと二人はいるように見える・・・・はははっ(汗)


いい加減、もう、慣れたけど・・・・・






智くんの式神は白いワンピースの女の子?

だったはずなのに


今ここにいるのはどう見ても男の子

しかもめっさ顔の濃い・・・・・


心なしか俺のこと睨んでるようにも見えるのだが・・・・


それと・・・智くんが俺の式神と呼んでいるいつものカエルのような輩・・・


なぜか今日は実体化していて、これもまた・・・・可愛い男の子


色白のツンデレ風?・・・・


例外なくこれもまた可愛い顔して俺のこと睨むんだよね・・・


俺が何したって言うんだ?




「翔くん?なにブツブツ言ってるの?早くしないと明日になっちゃうよ?」



「・・・・あぁ、ゴメン、こいつらがさ、俺のことなぜだか煙たがってるから」



「・・・んふふっ、そんなことはないと思うけど?もしそうだったとしたら・・・・」


「そうだったとしたら?・・・」


「多分、俺のせいかな?(苦笑)」


「なんで?」


「・・・・なんでだろうね?あははっ、わかんないけど、多分ね、」



そう言うと黙々と折り紙にノリをつけて器用に輪っかを作っていく


その指先のきれいなこと・・・



作業の手を止め思わず見とれてしまうほど・・・・・




「もう!翔くん、時間が無いんだってば!!」



「あっ、あぁ、ゴメン、ゴメン」





二人の式神にも鼻で笑われ


ようやくか来上がった短冊を笹の葉に結ぶ





「・・・・あれ? 智く~ん、ねぇ、あなたさぁ、お願い事は?」



見れば智くんの鮮やかな青色の短冊には


なんの文字も書かれてはいなかった


「・・・ん~、頭の中で書いてあるから大丈夫!」



「なんでよ、書けばいいじゃない?」



「いや、やめておくよ(笑)・・・・」



「どうして?・・・・・、」



「なんとなく・・・書くと・・・それが形になっちゃうからさ・・・」


あっ、そうか・・・・


だから智くん書けないんだ




「ふふっ、まぁ~書いてもいいんだけど、それじゃ、つまらないから」


「つまらない?・・・なにそれ?」


「ん?だからさ、簡単に願いが叶っちゃったらありがたみがなくなるでしょ?」


「まぁね、それはそうだけど・・・・ちなみにどんなお願い事しようとしたの?」


「えっ?・・・・」


なぜだか少し照れくさそうに視線を外し


ふんわり笑うと思いがけない事を言いだした



「・・・・・翔くんに素敵な恋人が出来ますようにって」


「お、俺に?恋人・・・・・」



一瞬、凍り付く心臓・・・・

それって、どういう意味なの?


俺は非常に狼狽えていた


智くんが・・・・俺に恋人を作れと?


なんで~~!!!そうなっちゃうの?

俺の想いは・・・・そのなんだ、まったく届いていなかった?


あぁ・・・もちろん告白したわけもなく


智くんの気持ちなんか確認したこともなく


勝手に一人で盛り上がっていた感は否めないが


てっきり・・・・いや、かなり


智くんに期待していたこともあり


今の智くんの発言が・・・・・


なぜだか俺を不安にさせていく


どうする俺?????


挙動不審になっているであろう俺の様子を


クスクスと笑いながら見つめる智くんのその瞳は



・・・・・やっぱりどう見ても

俺を嫌いとは言っていない






「ねぇ、智くんさ、もしその願いが叶ったら・・・その・・・・智くん的には


う、嬉しいわけ?・・・俺に恋人できることが・・・」



智くんをチラリと見れば


また・・・照れくさそうに視線を外す


今日はこの仕草をよく見るな・・・・



「・・・・・うん、そうなったらいいなぁ~とは、思ってる」



あっ・・・あぁ、そうなんだ・・・・


チ~~ン


頭の中で鐘が鳴る


なんか、聞かなきゃよかった・・・はははっ


身体の力が一気に抜けて行くのがわかる


下がり気味の肩が更に傾いていく・・・・・




「・・・・翔くん?どうかした?」



「い、いや、何でもない・・・そっか、恋人・・・・ね」



自然に大きな溜め息が漏れ、恨めし気に智くんを見上げれば



満面の笑みで俺を見つめる視線とぶつかる


あぁ・・・・この顔に俺は弱いんだよ


こんな表情を他の奴等に見せたくなんかないのになぁ・・・


一人占めできたらどんなにいいか・・・・



「はぁ~~~~」



俺の願いが書いてある短冊が何だか色あせて見えてきた


智くんが俺の中から出ていこうとしているような気がして


寂しくなっていた



『・・・・・ショウ・・・ヘタレ』


『・・・・・オマエ・・・ニブイ』



同時に二つの声が重なる



「えっ?な、なに」



一瞬キョロキョロと辺りを見回し

思わず智くんの方に振り向くが

どうやらその声は俺にしか聞こえないらしい・・



(・・・ヘタレッって言われれてもなぁ、こればかりはさすがに・・・)



智くん・・・・その願い叶わないでほしいよ

できることなら永遠に


だって・・・俺、智くん以外に好きな人なんか

できないから・・・・・



そう伝えられたら少しは楽になるなかな?俺・・・・



結局、日付をまたぎ


飾りつけられた笹の葉をベランダに出して


何とも言えない空気の中

智くんと酒を呑む



いつもと変わらない風景が

俺を一人取り残そうとしていく


俺の願いは叶えられるのかな?



『いつも笑顔で、ずっと一緒にいられますように』





上手く笑えるかな俺?


手にしていた残りの酒を一気に口に流し込み


隣で笑っている智くんをいつまでも眺めていた



初めて感じる違和感とともに・・・