慌ただしくバスルームから出てきた翔くん・・・

俺の姿をみて安心したのか立ちすくしている








本当は・・・

シャワーを浴びている間に

この部屋を出ていくつもりだった

十年分の・・・

思いを全てここに置いて行こうと

決めたはずなんだ



だけど、欲が出た

もう一度だけ、翔くんを

感じてみたくなった


俺の中で形にならない感情が

噴き出してきて

翔くんを求めている




ずっと・・・約束を覚えていてくれた

それだけで

救われたから



他になにもいらない

はずだったのに・・・・ダメだな俺




「智くん・・・?」




俺を見る不安気な翔くん





この関係に

名前をつけるのならどんな言葉が似合うのだろう?





翔くん・・・・

好きになんかなったりして

ゴメン


もうすぐ・・・

翔くんは自由になれるから

だから・・・

もう少しだけ・・・・





椅子から立ちあがり

ゆっくりと翔くんへ向かう






溢れる涙の意味を

翔くんが理解した時

俺の想いは報われるんだ


それが一番望んだ形にはならなくても


報われる・・・



二人が歩み寄りその存在を確かめ合う


まだ濡れている髪から落ちる雫が

頬を伝う

中途半端な翔くんの体温


シャワーー・・・途中?

冷たいところと

温かいところが

半分半分・・・






何かを探ろうと揺れる瞳に

俺の姿を映し込む


今だけは俺を、俺だけを見て欲しいから

なにも考えずただ、目の前の俺だけを

感じて欲しいから


「翔くんが・・・欲しい」


「智くん・・・・・」



見つめ合い絡まる視線に熱がこもる


抑え続けた感情が堰を切り・・・・


流れだした激流が今一つに交わる