水面に這うように浮かぶ
ミズスマシ・・・・・
綺麗な輪を描き駆け抜ける
澱みない綺麗な輪を・・・
俺はその水面に自分を映し出す
輪が消えかけた水面は
ゆらゆらと揺れ動き
歪みを生む
そう・・・・
まるで俺の心のように
真っ直ぐに向かってくる
あいつの想いを
受け止める自信がなくて・・・・
いつもそこから逃げ回る
愛想つかされても仕方ないのに
変わらず傍にいてくれる
不安な俺の心を見透かすように
それさえも、かき消すような
微笑みをくれる・・・・
あまりの純真さに・・・
戸惑うほど・・・・・
俺は・・・・不器用だから
言葉にするのが苦手だ
かと言って・・・・
態度で表せるわけもなく
心とは裏腹に卑屈になっていく
俺を・・・・・
どんな思いで見ているのか
いつか・・・・
輪が乱れてしまわないように
この関係を失わないように
無意識に自分の気持ちに
蓋をした・・・・・
水面に映る綺麗な輪を
本当は壊してしまいたいのに
ミズスマシのように
何も考えずにすすめたら
いいのに・・・・・
今日も俺は歪んだ輪を
ぼんやりと眺める
無意識にあいつの微笑みを
探しながら・・・
「ねぇ、・・・・・・・智くん、」
「ん?・・・・」
「たまにはどう?」
口の前でクイッと飲む仕草
その後に続く満面の笑顔・・・・・
本当はすごくうれしいクセに
即答できない俺・・・・・
「あぁ・・・・、悪いな、また誘ってよ」
挙句の果てに断る間抜けな俺・・・・
「そっか・・・・・残念」
ふっ~と大きなため息交じりに
微笑むお前は・・・・
いつもより小さく見えた・・・・
ごめんな・・・・・
二人きりになんかなったらさ・・・・
今の俺は危ないんだよ、
酒なんか入ったら尚更ヤバイ
お前ひん剥いて抱きつぶしそうだし
やめてって言ったって
やめられそうにないから・・・・・
だから・・・安易に近づいてくれるな!!!
蓋をしたはずの感情は
お前の笑顔で簡単にはずれる
それを押し込む事が・・・・・
段々と窮屈に思えてきた
俺って・・・・面倒くさいな
少ない荷物の整理をして素早く
その場から立ち去る
「じゃ、お先・・・・」
背中に視線を感じながら
ドアを閉めた
とたんに湧き起る甘酸っぱい感情に・・・
涙腺が緩みだす
最近の俺は・・・・
自分でも笑えるくらい
よく泣く・・・・
いつまで続くんだ?
面倒くさい俺は・・・・・
「さて、・・・・帰るか」
はずれかけた蓋を締め直し
小雨降る街を歩きだす・・・・・


