「もう梅雨入りか・・・・早いな」


新聞から目を離し空を見上げる

どんよりした雲間から一瞬見える日差しに

目を細める



久しぶりにゆったりとした朝を迎えている

一時も離れないで傍にいるはずの俺のお姫様は・・・


ただいま絶賛制作活動中(笑)


智の作品の売れ行きが思いのほかよく

別の店舗にも置いてみないか?と、話があったらしい



それ以降、俺の休みの日でも

せっせと作品を作っている事が増えて・・・


まぁ・・・喜ばしいことではあるのだが





・・・・・寂しくもある



少しは俺の存在を確かめて欲しいものだ(苦笑)














「翔ちゃ~ん!!!・・・・・・」



ドアを開けるなりいきなり俺に飛びついてきた智


「なに?どうしたの、」


顔を想いきりほころばせ息せき切って話だす



「もう一つのお店にも、置けるって!!!」


「・・・・置けるって?」


「作品、作品!!!作ったもの、一杯!!!」


俺の腕をぶんぶん振り上げる・・・・あぁ~飛び散ってる


「智、わかったから(笑)、離して、飛び散るから・・・・」



本日の夕食は天ぷら・・・・


二人で床を拭きながら話は続く・・・



「よかったな、好きなことが仕事になって」


「うん!好きなことして仕事になるって楽しい!」



無邪気だな・・・・・


「翔ちゃん、前祝いしたい!」


「前祝い?」


「いつも翔ちゃんにお世話になっているから、お礼したい」


「それって、前祝いなの?(笑)」


「・・・違うの?」


「・・・・・・・・・。(笑)」



ニコニコしながら床拭きしている智が

可愛い・・・いじらしい・・・





智・・・お礼ならもう一杯もらってる


こうして傍にいてくれることで俺の生活は

色を持つ・・・・


お前なしの俺は・・・・考えられないんだ




それくらい・・・・・夢中だ


智に夢中・・・・



変わったなって・・・・言われるわけだ(笑)


あいつらに会うたび冷やかされる


俺の顔が優しくなったって・・・・


今まではどうだったって言うんだ?





「・・・翔ちゃん、終わった!・・・・ん~、風呂はいろう!」



「へっ?・・・風呂?」



あぁ・・・服にもついてるって?



でも夕飯は・・・・・


まっ、いいか、姫のたってのお願いなら




「今日は、僕が翔ちゃんを洗う!」


「・・・・・・(照)。いいよ、」


「なんで!!」


「・・・・・いいから、先行ってろって」





いつもの俺は・・・


智と一緒に入る風呂では・・・・・



智の身体を隅々まで洗う・・・・


色めき立つ声にやられて


その途中、行為に及んでしまうのだが


それを、智が俺に施すと?・・・・と、いらぬ想像をしてしまう




「・・・翔ちゃん、いいよ~入っておいで~」



・・・・・呼び方まで真似してるし(苦笑)


「・・・・待ってなくていいから、温まったら早く出ろ!」




「・・・・つまんないの~、(ブクブクブク)」




脱いだ服を洗濯器に入れようとしたとき


ポケットから何かが落ちた


・・・キーホルダー?



それは、綺麗な紫色をしたアジサイの花をモチーフにした


キーホルダーだった



「すげ~・・・きれい」


思わず声になってしまうほどの出来栄えに


智の才能を改めて確信する



いずれはここから羽ばたいていってしまうのかな?


そんな事を思いながら


夕食の支度に戻った・・・・



天ぷらは・・・・またにしよう



今日は蕎麦だ!

蕎麦!!






紫陽花の花詞

「移り気」「変節」「辛抱強い愛情」「浮気」「高慢」「あなたは冷たい」等々・・・