ドアノブが・・・重たい

まわす手に力が入らずそれでも流れ落ちる

熱い雫とともにこの場から

立ち去らなければいけない


深くひとつ息を吐く


そしてドアを開けた・・・・・






バンッ!!!








「えっ?」






いきなり背後から視界に飛び込む両腕

左手がドアをなぞり鍵をかける


右腕はドアから離れ俺を包みこむ・・・・・



それは一瞬のことだった


だが、スローモーションのように

一コマ一コマ俺の脳裏に刻みつく・・・・・




「・・・・・翔・・・くん?」




頭の上に感じる重み・・・


フゥ~と吐きだされる大きな溜め息


そして・・・・両腕にきつく抱きしめられた




立ち尽くす俺は・・・・・


ただ溢れる雫をぬぐうこともせず

身体は緊張したまま正面を見据えるので

精一杯だった


何か言わなければ・・・・・

ここから去らなければ・・・




手遅れになると・・・・わかってはいるのに


どうすることも出来ないでいた




「・・・・智くん?」


その声にピクリっと身体が震える



その声はそれに構わず話を続ける



「・・・・言い逃げ・・・する気?」



左の頬に感じる体温


耳元で囁かれる紡ぐ想い


確かに・・・・聞こえた




『好きだ』と・・・・・



『愛している』と・・・・・




翔くんの声がそれを俺に伝えた






だがすぐに打ち消される

俺の過去によって・・・


俺には翔くんが初めてにならない事実


「・・・・翔くん・・俺は、もう・・・白くない」



「・・・・・知ってる、だから?」



身体が跳ねる・・・・


「だから?・・・・・そう、だから俺は翔くんには・・・ふさわしくない」



「・・・それはさ、・・・智くんが決めることじゃないよね?」




翔くん?・・・・・



ゆっくりと向きを変えられ向かい合わせになる


咄嗟に泣き顔を見られたくなくて

顔を背ける



翔くんの右手が俺の頬を包み込み


親指が涙をぬぐう




「・・・・智くん・・・こっち見て」



「・・・・・・・・・。」



甘い声は同じ言葉をもう一度伝える


「・・・・・・・・・。」



俺はその声に誘われるように

面をゆっくりと翔くんに向ける


翔くんはにこりと微笑むと

自分の方へそっと俺を引き寄せた



ポフッ


翔くんの胸に収まる


俺はただ翔くんにしがみ付く



離れてしまわないように


夢じゃないようにと


何度も心で叫んだ









「・・・・・智くんが・・・・」




その言葉に耳を疑う






・・・・・・翔くん