「おおちゃん、二度同じ間違いだけはしないで、

意地張らないで追いかけたらいい」


「斗真・・・」



店を飛び出し翔ちゃんの後を追う

ただまっすぐに走った


わき目もふらず

ただ走った

沸き起こる焦燥感で

溢れ出るものを押さえることさえできない

ぐしゃぐしゃになりながら

ただ、愛しい人の背中を目掛けて

・・・・・走った




・・・・・・・・ハナミズキの頃  ep5











息が苦しい・・・

何度も足を止めそうにる

追いつかないことに

焦り、気づけば泪が溢れだしていた

久しぶりに

泣いた気がする

行きかう人波をよけながら


探す・・・背中を



遠くに一人佇む人影が見えた

花びらの散った葉桜をみあげている


それが誰なのか

確認するまでもなく

高鳴る鼓動と荒い呼吸を整わせる


スゥ~・・・・フゥ~



近づけばそれは紛れもない

追い求めてきた背中で、

心なしか寂しそうにみえた・・・



汗と涙でぐずぐずになった顔は


見られたものじゃ無いだろう・・・




その背中が歩き出そうとしたとき


自分でも分からないうちに


勢いよく駆け出して


・・・・・思い切り抱き着いていた


汗と涙でぬれた顔を摺り寄せ

懐かしい匂いに包まれる






一瞬固まる身体・・・

拒絶される・・・・・


でももう離れたくない!


思い切り腕を絡ませ

シャツをきつく握りしめた・・・・





「・・・・翔・・ちゃん」




声が出ない・・・

身体が震えて上手く話せない・・・





「・・・・どうして」



震える・・・翔ちゃんの声

ずっと聞きたかった低く甘い声




「・・・・会いたかった・・・ずっと」


精一杯、絞り出すように伝える





「今・・・何て?・・・」



もう一度・・・僕に勇気を!!!



「・・・・・翔・・ちゃんに、会いたかったんだ・・・」



想いを・・・伝えた

翔ちゃんに・・・・・


ずっと・・・・・会いたかった




微動だにしない翔ちゃん・・・・



やっぱり・・・僕じゃ無理なのかな


そっとしがみついてた指先から

力を抜こうとした瞬間




「・・・・・・。クソッ!!」



まわした腕を掴まれ

翔ちゃんの前に引き寄せられる


そこには・・・・

俯いたままの・・・愛おしい人の

姿があった

忘れられないでいた姿が・・・



ゆっくり視線を僕に向けだす


その瞳からは大粒の泪が溢れていて




「よく・・・見えないよ・・顔が」



そう言って翔ちゃんは笑った・・・・


僕は・・・・その口元に

吸い寄せられるように自分の

唇を重ねた・・・・・


ずっと欲しかった温もりを

忘れるはずのない

その感触を・・・・

翔ちゃんに僕を刻みつけたくて


何度も何度も口づけた



しょっぱい・・・

でも・・・・とても 甘美な味がした



翔ちゃんは僕の腕を掴むと


確かめるように

何度も口づける


それに全て応えようと

僕は・・・・息の続く限り

その身を任せていた・・・・




僕の憂鬱な季節が

今、終わる・・・・・















「智・・・・・」



「ん?なに、翔ちゃん」




「なんで・・・俺を?」



「ふふふっ・・・一緒に・・・いたいから」



翔ちゃん・・・・もう僕は

思っていることを素直に言葉にするよ

もう、あんな思いはしたくないから・・・



「智・・・Can you marry me?」


・・・・・英語?


「????翔ちゃん、英語よくわからない・・・」



「・・・・・(照)。」


なんで照れるんだ?


マリー・・・?メリー・・・?


あれ?・・・っえ、もしかして?


「・・・・・翔ちゃん、こういう事?」



そう言って

二粒のサクランボの枝で作った

輪っかを翔ちゃんの指にぶら下げてみる!


翔ちゃんにとびっきりの笑顔を送りながら


照れた顔を覗いてみると

真っ赤っか!


・・・・ゆでだこみたい


んふふふっ(笑)



自分の指にも同じものをぶら下げる



「・・・・おそろい!」



そう言って翔ちゃんに見せた!!



見る見る甘~い表情に変わって行く

翔ちゃんを、ただ、ずっと見つめていた


大好きだって

僕の心臓が声を出す




また、あの英語をしゃべったら


今度は・・・きっと答えてみよう


yes・・・でいいんだよね?きっと・・・・