「翔ちゃん・・・・・?」


思わず口にしてしまった・・・・名前

呼んだだけでこんなにも・・・胸が熱い


ピクリと肩が動いた

僕だって・・・わかったよね

お願い・・・そうだって言って


もう一度だけ・・・名前を呼んでみる



「翔・・・ちゃんでしょ?」



・・・・・・・・。


翔ちゃん・・・・




僕は、そこまで必要とされていなかったの?

会いたかったのは僕だけ

この出会いも

ただの偶然なんだね




翔ちゃん・・・・





・・・・・・・・・・ハナミズキの頃   ep4







「・・・・すみません、人・・・違いでした。はい、これ。」


目の前に拾ったコインを置き


その人の前から一刻も早く

消えてしまいたかった


いつまでも・・・淡い期待をしてしまいそうになるから


・・・・翔ちゃん


少し・・・痩せた気がした


いろんな事が一遍に頭の中を駆け巡る

でも・・・



そうだよね、本当に僕が必要ならもっと早くに

来てくれてたはず

今頃・・・・こんなところに

いる人じゃない


翔ちゃんは・・・・もういない


「おおちゃん?どうした、知り合い?」


「・・・・・ううん、違った」


そう言ってみたものの

気になってしまう

視線を移すと

丁度店を出るところだった・・・・



足早に去っていく後姿を

じっと見送っていた


・・・・・振り向いてもくれないんだ

翔ちゃん・・・・



「・・・ちゃん、・・・おちゃん!・・・おおちゃん!!!」


「あっ・・・ゴメン、注文だよね、」



斗真が俺を真剣な目で見ていた





「昼めし食ってる場合じゃないんじゃないの?」



「えっ・・・?」



翔ちゃんが去っていった方向を見ながら


「あの人なんでしょう?おおちゃんの大事な人」


・・・・大事な人?


「・・・・違うよ、(苦笑)」


水を飲もうとコップを持つ手が

震えた・・・・・



「・・・・・おおちゃん、二度同じ間違いはしちゃいけない」


「・・・・斗真?」


斗真は、二宮さんの来ていた理由を

話してくれた。

僕がどういう状態なのか確認するため

自立を目的としているなら

翔ちゃんには何も云わないでおこうとしていたこと

少しでも未練がありそうなら

翔ちゃんがかなりまいっているから

きっかけを作ろうとしていたこと

どちらにしても本人の意志のもと

強制はしない・・・

斗真もずっと気になっていが

松本さんからも止められていたらしく


「いまが、その時だと思うよ」


そう・・・背中を押そうとしてくれた


「・・・・僕は」



・・・・・会いたかった

ずっと・・・忘れたことなんかなかった


翔ちゃんは・・・本人の意志でここに?



気がついたら・・・・

勝手に身体が動いていた・・・・






「翔ちゃん!!!」