「大ちゃん・・・そろそろ先輩の家に帰った方がいいんじゃない?」


僕が出ていってからしばらく泊めてもらっていた斗真に

忠告され・・・何度か翔ちゃんの家に戻ろうと足を運んだ

でも・・・そこで目にしたのは

笑顔の翔ちゃんで、何度か家に遊びに来たことのある

二宮さんや、松本さんと楽しそうに話をしている姿だった





「僕が・・・いなくなっても・・・平気なんだ、」



翔ちゃんの・・・・・ばか・・・・




ポツポツと降り出した


夕立にびしょぬれになりながら

顔に当たる冷たい雫と

流れ落ちる熱い雫が

僕の顔を伝い身体中を濡らしていった


むせび泣き斗真の家に着いたときには

すっかり雨も上がり

綺麗な虹が空にかかっていた・・・・



「キレイ・・・翔ちゃんと、一緒に見たかったな・・・・」








・・・・・ハナミズキの頃・・・・・ep2













斗真の家はこじんまりとしたカフェを何件か経営している

僕は以前から趣味で作っていた

フィギュアやイラストをそのカフェで販売してみては?と

言われていたことがあった


今回を機に何点か出してみたら

「完売したぞ!」

って斗真が連絡をよこしてくれた


僕の作品が売り物になるなんて

考えても見たことがなくて

正直驚いた・・・


世の中にはもの好きな人もいるもんだと

そう思った(笑)




僕はそのまま実家には帰らず

斗真が用意してくれたアトリエ用の簡単なスペースを

使って作業をすることにした

収入の少しを家賃代替わりにして


一人になると・・・思い出してしまうから

斗真たちがいてくれて

助かった・・・・




ある日、店番を頼まれて

カウンターの中でコーヒーをおとしていた時の事だった

何人かのお客さんが僕の商品を見に来てくれた



その中に・・・

二宮さんの姿を見つけた



・・・・・会いたくない



そう思ったけれど

店には僕しかいなくて


逃げることができなかった





二宮さんは僕に気づいた様子だったけれど

声をかけることはなく


そのまま、友人らしき人たちと

店を後にした・・・・




ホッと・・・・した




だけど・・・・


その後も何度か

僕の店番の日に限って

二宮さんと、松本さんが

コーヒーを飲みに来るようになってしまった



ただ、僕に言葉をかけることは一度も

無かった



二宮さんの目的がわからなかった

偶然なのか?

付き合いなのか・・・


もう一人の

松本さんは・・・・


斗真にようがあったことだけは

わかった



僕が翔ちゃんを見るように


斗真を見ていたから



真っ直ぐに・・・・・


僕が上がる時間になると

少しソワソワし出す松本さんが

可愛らしく思えた


僕の後のシフトが斗真だったから


ニコニコと松本さんと視線を交わす

斗真が輝いて見えた



きっと、斗真も松本さんの事が

好きなのだろう・・・・


ふと、そんなことを考えてしまった



斗真が・・・・羨ましかった


あんなにわかりやすく

想いをぶつけられて・・・・



僕には・・・無かったもの

それとも・・・気づかなかっただけ?



・・・・・翔ちゃん




なんだか無性に会いたい



・・・・・翔ちゃん


会いたいよ・・・・・