楽しい時間には終わりが来る
撮影終了の時刻を告げられ




どちらともなく・・・素に戻って行く
あれだけ飲んだ酒もADの声で
一気に覚めていく・・・

・・・・おつかれさまでした!!



あぁ~・・・終わっちゃった・・・
まだグラスに少しだけ残っていた酒を見つめて
氷をカラン・・・と揺らす

遠くで翔くんの声がぼやけて聞こえる
帰らなくちゃいけないのに
そこから身体が動かない
酔っているわけじゃ無いのに
ダダを捏ねているのか?俺の身体は・・・
クスクスと笑っている俺をスタッフが心配そうに
見ている・・・

ふと、誰かが翔くんの名前を呼んだ

「櫻井さ~ン、こっち来られますかぁ?大野さんだいぶ酔ってる
見たいなんで!!!」



おい、・・・・なんで、俺が酔うと翔くんが呼ばれるんだ?
おかしいだろう?




文句の一つでも言ってやろうと
顔を上げれば
真っ丸目玉のイケメン王子が
俺をじっと覗き込んでいる

「大野さん・・・大丈夫?顔色悪いけど・・・
だから飲み過ぎって言ったじゃない、

今、車取りに行ってもらったからそれまで少し横になる?」

・・・なんだよ、翔くんまで言われたとおりに来なくったって
いいんだよ・・・だいたい俺は酔ってなんかいないし
ただ、ちょこっと、
つまんないな・・って思ただけだから
気にしなくていい・・・

ってか・・・
もう大野さんに・・・なっちゃったの?
名前・・・じゃ・・・ないんだな

翔くんに・・・・名前呼ばれるの
好きなんだけどな・・・あのイントネーションが
心地いい・・・ふふっ

「大野さん?寝ちゃダメだよ!起きてって、ねぇ、ちょっと!!」

まだ呼ばない・・・大野じゃないだろ

「・・・とし・・だろ?」

「はっ?なに?大野さん何言ってるのか聞こえない」

・・・・翔・・くんのば・・か









マネージャーが車を取りに行って
戻ってきたころには、智くんは夢の中に行ってしまった(苦笑)

モゴモゴ何やら話していたけれど
ほとんど聞き取ることはできなかった
一つを除いては・・・(笑)

起こしてもなかなか覚醒しない智くんを何とか車に乗せて
体を離そうとしたとき、シャツが何かに引っかかった
見てみれば・・・
端をギュッと握りしめている智くんの手・・・
色が変わるほど強く握られている・・・
その手を外そうと試みるも・・・
ビクともしない


あはっ・・・
思わず綻ぶ顔・・・

しかし、どうしたものか・・・・・
シャツを脱いでしまえば俺は帰れる
このまま同乗して帰ることも出来る
だが・・・部屋に運ぶとなると・・・

結局、智くんのマネージャーに懇願され
同行することになった
どのみち、こうなった智くんを
部屋に連れていくのはかなりの重労働
マネージャーだけじゃ無理だったろう

・・・・都合のいい言い訳を
一人頭の中で呟いていた

そこに行くのは初めて・・・じゃないから
智くんの家の前には何度も行ったことがある

そこで偶然見た智くんと・・・斗真

それ以来俺は智くんと
距離を取った・・・
今、必要とされているのは
俺じゃない・・・そう思ったから

その後、何度か仕事で一緒になった斗真と
一度だけ智くんのことで話をしたことがあった

智くんの心にはもう別の人が住んでいて
自分の入る余地がなかったこと・・・
今でもその人のことを一途に思っていること

なんでそんなことを斗真に言われたのか
その時は気づかなかった

でも・・・この頃
それが誰なのか知りたい自分がいて
そしてもしかしたらそれは・・・・
俺なのかもしれないと
勝手に期待している自分がいて
焦らないって決めたのに
自分じゃなかったらって
思うと・・・
そりゃ怖くないといえば嘘になる
俺からは・・・・動かないって
決めたけど・・・


決めたけど・・・
こんな寝顔を見せられたら
決心挫けそうだよ・・・(笑)


智くん・・・



どうしよっか・・・俺







智くん・・・・

俺ね、やっぱり
あなたが・・・・好きだよ