
定刻・・・まだ外は明るく
こんな時間から飲めるなんて
贅沢だな・・・
しかも智くんと(微笑)
この企画の松潤に感謝・・・だな!
智くんは・・・
どんな風に思っていてくれているのだろう?
あれ以来、二人で飲むこともなくなって・・・
二人で会うこと自体
ホントに久しぶりだから
何を話したらいいのか・・・
今から舞い上がっている、俺・・・って
自分で自分がおかしくて
思わず笑ってしまう
ほどなく智くんの乗った車が到着する
すかさず身体が動いてしまう俺・・・
後部のドアを開け智くんをエスコートしている
これも・・・身体に染みついた癖?
一瞬、驚いた顔で俺を見て
クスッと笑う
・・・変わらない昔と
むしろ・・・もっと柔らかくなったのかな?
智くんの笑顔は周りを
幸せにする・・・
気づいていないだろうけど(苦笑)
一般大衆向けの飲みや?居酒屋か・・・
学生時代の仲間とは結構行くが・・・
智くんとは・・・初めてかな?
こういう場所に一緒にいった
記憶があまりない・・・

セッティングされた場所に座り
ビールが用意される・・・
最初はビールで撮影し、
後は好きなものを
注文していいらしい
自然と・・・
テンションが上がる(笑)
メニューを手にとり
食入るように眺めている智くん
楽しそうに瞳をキョロキョロさせている(笑)
ふと視線を外した先の・・・
その指先に目がいく・・・
綺麗な・・・細くながい指
決して俺の背中に回らなかった
指先・・・・
いまだに・・・思い出してしまう
熱い想いをはき出してしまった
あの日を・・・
ははっ、未練がましいな・・・いい加減俺も!
いずれにせよ・・・
この時間を俺は楽しむ!!
邪な感情よ消えろ!!!今だけでいいから
視線が合えば・・・
照れくさい感情の方が優っている
欲情丸出しのあの頃の俺じゃ
考えられないような穏やかな時間
とりとめのない会話が弾み
いつしか気を遣うことなく
二人の世界にはまって行った
周りのスタッフッを置きざりにして(笑)

しばし智くんの仕草、視線、声、香り
口元を・・・堪能する・・・
ずっと温めてきた想いが一気に
押し寄せてくるのがわかる
酒の影響を考えれば・・・
そろそろ潮時
だが・・・
目の前の智くんは・・・
制限しない
楽しそうに、日常の出来事
メンバーの話・・・
家族の話・・・
趣味について・・・
俺の心配をよそに饒舌に話してくれた
少し・・・飲み過ぎかな・・・
心配になり
「さと・・大野さん、少し飲み過ぎてない?」
と、声をかける・・・
何杯目かわからないグラスの中身を
飲み干したところで
上気した頬にあてがい
熱を逃がそうとするたび
氷がカランと涼しげな音を鳴らす
その音に気をよくしたのか
グラスを左右に揺すりその音色を楽しむ
智くん・・・
もう酔ってるな・・・(苦笑)
今日はこの撮影で俺も、智くんも上がり
気兼ねなく飲めることは飲めるのだが・・・
問題は、この人の酒癖
そうなる前に・・・
何とかしないと
俺が・・・
非常にまずい・・・・
「翔くん・・・はさ、何でもできる人じゃん・・・
手に入らないものはもう無いんじゃない?・・・」
「えっ?・・・」
唐突に話だす智くん
その内容にどんな意味があるかなんて
考えちゃいないんだろうな
きっと・・・

お店の人にグラスのおかわりをオーダーしながら
俺に向き直りどうなんだ??
と、言わんばかりの顔をする・・・
「・・・・手に入らないもの・・・は、あるよ」
真顔で答える俺に
「・・・・ふふっ、何マジに答えてるんだよ・・・ばぁか(笑)」
智くん・・・・

「あなたこそ・・・どうなの?
随分描きためてるんでしょ?
大作仕上げたって言ってたし、
そろそろまた個展でも開いてみたらいいよ
俺、一番に見に行くからさ、
今度は入場料くらいとってもいいかな(笑)
何て言ったって、我らの画伯だからね、智くんは!」
えっ?
って、顔をする智くん・・・
俺、何か変なこと言ったかな?
そんな心配をよそに、少し俯き加減になった顔に
綺麗な・・・花が咲いた
「んふふっ・・・久し振りに聞いたな、・・・」
小さくボソッと呟くその花が・・・
ゆっくり顔を上げて俺を見る
とろけるような・・・甘い瞳で
俺を・・・見る
揺れる瞳
潤う口元
紅く上気する首すじ
酒で感覚が敏感になっているのか
それだけで・・・・
俺の中にしまいこんだ
あなたが・・・暴れ出しそうだ
手は出さないって・・・・
決めたんだ
智くん・・・あなたから本気で求めらるまで
触れないって・・・
決めたんだ
だから・・・
そんな目で、俺を見ないでよ・・・・
胸が詰まるでしょ・・・
反則だ・・・それ(苦笑)
手にしていた焼酎を一気に飲み干す
酒って・・・こんなに旨かったっけ(笑)
この時間を俺は心底楽しんだ・・・・

楽しそうに語る智くんを
近くに感じながら
ずっとこの時が続けばいいと
思いながら
伝わってくる柔らかなオーラを
感じながら
今までとは・・・違う
智くんの変化を少しだけ感じ取りながら・・・


