
薄茶色の瞳が・・・
ゆっくりと開かれ
俺を捉える・・・・
ずっと俺だけを映してほしかった
その瞳に精一杯の笑顔を見せた・・・
・・・・ちゃんと笑えているだろうか
届いているだろうか・・・・
そんな俺にあなたは・・・どうして
「翔・・・くん、なぜ、泣いているの?」
その一言で・・・・
俺の中の決意は脆くも崩れさる
笑うことなんて出来やしなかったんだ
こんなにもまだあなたが好きなのに・・・
消し去ることなんて出来るわけが無い
抱きしめて泣いた涙の痕を
あなたの手がそっと辿る・・・・
触れられるところが熱を持つ
「泣き虫・・・だな、やっぱり翔くんは・・・」

あれだけ我慢していたのに・・・想いは堰を切り流れ出す
あなたの胸に顔をうずめ・・・声を上げて泣いた
もうずっと抑えていたものが一気に溢れて止まらなかった
あなたの手が俺の頭を優しく包み込む
今・・・智くんが何を思い
何を考えているかそんな事はもう
どうでもよかった
俺は・・・二度とこの手を離したくはない
ただ・・・それだけを
考えていた・・・
あなたの胸の鼓動が
俺を・・・落ち着かせていく
どれ位そうしていたのだろう・・・
気づけば俺は
智くんに見下ろされていた
泣き疲れ眠ってしまったらしい
「・・・気が済んだ?(笑)」
「智・・・くん?」
「ゴメン・・・ずっと一人で我慢していたんだね・・・」
「・・・怒らないの?俺のこと・・・」
昨日のこと聞かない智くんに
なぜ・・・俺を受け入れたのか
どうして・・・そのことを問いたださなかったのか
聞きたかった・・・
「あぁ・・・怒るわけない、俺がそう望んだから・・・
翔くんこそ・・・なんで俺と・・・」
その答えを今言ってもいいのだろうか・・・・
・・・・思うより先に勝手に口が話だしていた
「俺が・・・悪いんだずっと智くんに心配ばかりさせてきたから
俺は・・・智くんのことがずっと好きだった
今でもその気持ちは変わらない・・・
智くんに何かあったら耐えられない俺が代わりになれるなら
何でもする・・・あんな思いもうしたくない・・・
二度と離れたくない・・・ずっと傍にいたい

だから・・・・
だから・・・(泣)
俺のこと・・・もう一度好きになって!お願い・・・智くん・・・」
最後は・・・涙で言葉にならなかった・・・
だまって聞いていた智くん・・・・
俺の顔を真っ直ぐに見つめる
何かを言おうとしたとき
その顔が一瞬固まる・・・
俺の肩越しに視線を止めた
「智くん?・・・」
「・・・・翔くん・・・・・あれは?」
指さす方に視線を向けると
青い包装紙に包まれた・・・小さな箱
もともとは智くんの物だ
ふと、何かのきっかけになればと
俺はそれを手にとり智くんに手渡す
皺くちゃになってしまった
その箱を・・・智くんは大事そうに眺めていた
「翔くん・・・これ、開けてみて・・・」
「えっ?でも・・・これは、智くんの・・・」
「いいから、開けてみて・・・」
こんな展開でこれを開く日が来るなんて
想いもしなかったけれど・・・
智くんからの贈り物・・・・だから
青い包装紙をはがすと中には真っ白い
箱に入ったビロードのジュエリーケースが出てきた
そのケースを開けると
シルバーのリングが二つ並んでいた

「これって・・・智くん・・・」
中身を・・・聞いていたとはいえ実際に目にすると
感動する・・・俺に・・・じゃ無かったかもしれないけれど
振り向けば・・・涙をためて
ポツリ、ポツリ話し出す智くんがいた・・・
「・・・・俺が買ったんだ・・・あげたくて
一緒につけてほしくて・・・偶然見つけたんだ・・・二つ・・・
そう・・・あの日それを渡したかった・・・
なのに・・・自信がなくて逃げたんだ・・俺・・・・・」
ゆっくり顔を上げる智くんの瞳は
揺れ動いていた・・・・
不安気で寂しげな瞳に泪をいっぱいため込んで
今にも溢れ出しそうなほど・・・・
俺は・・・そのリングを手にとり
自分ではめる・・・
「翔くん・・・?」
「智くん・・・これ俺にくれない?大事にするから
俺じゃ・・・ダメかな、俺・・・一生つけるから・・・これ」
そう言って智くんの顔の前で指にはめたリングをかざすと
「・・・ダメだ!!!翔くんは・・・ちゃんとした人と・・・
一緒に・・・ならないと・・・ならないと・・・・いけない・・
えっ?・・・・翔くん?・・・・・翔!!!!」

あぁ・・・・・智くん
・・・・・やっとあなたに逢えた
