「・・・ゴメン、俺何か気に障ること言った?」



自然と翔ちゃんの泪を指で掬っている俺・・・

ピクリと身体が跳ねる翔ちゃんをみて

我に帰る



俺は・・・

この泪を知っている?



温かい雫は指の間から手のひらに流れ込み

袖口を濡らす


「翔ちゃん・・・俺、誰かがいるんだここに・・・

この胸の奥に熱い塊があるんだ

でも分からない・・・その人が誰なのか

翔ちゃん・・・知っていたら教えてほしい・・・」



目の前で肩を震わせている翔ちゃんに・・・

いったい俺は何を聞いているのだろう

でも・・・止まらなかった

どうしても答えが欲しかったから・・・




「・・・・んな気ない癖に・・・めろ・・」


「えっ?翔・・・ちゃん?」



「忘れるくらい嫌な癖に・・・そんなこと言うなよ!!」




泣きながら俺に訴える翔ちゃんの

言っている意味がわからない・・・




「翔ちゃ・・・」


「言うな!やめろ!!やめてくれ・・・」



声を荒げ・・・そう言うと

上着を手に取り席を立ち

あっという間に出ていってしまった・・・・




何が起きたのか・・・理解できない俺は

ただその場に座り込み・・・

自分の目から溢れる

涙の意味さえ分からないまま

泣き続けていた・・・・









「翔さん・・・切れちったか」



二人の様子を影から見ていた俺は・・・

思わぬ展開に割り込むことが出来なかった




泣き続けている大野さんに忘れてしまっている

好きな人を伝えることも出来たのに・・・

まだ云えない・・・そう思って言葉を呑み込む

自分から思い出さないと意味がない気がしたから



辛い・・・よね

二人とも・・・でも、俺は信じてるから




「あれ?翔さんは・・・ってか何泣いてるのリーダー?」


敢えて明るく話しかける・・・

変に気を遣うと、この人すぐ気持ち隠すから・・・




「・・・っく、潤・・・わっかんないんだ、分からないのに

翔ちゃんが泣いてたから・・・それ見たら涙止まんないの

なんか、意味わからないけど・・・怒ってた翔ちゃん・・・

俺のこと・・・怒ってたんだよ、潤、なんでだ?グスッ 」




フゥ~・・・そりゃ怒るでしょうよ・・・

何て言ったって、愛しの智様が自分を忘れてるんだから


焦るな俺!

・・・じっくり時間をかけないと

余計こじれる・・・




「きっと飲み過ぎて頭ごちゃごちゃしてたんでしょう?

リーダーも泣かない!飲み過ぎだよ・・・」


気持ちが落ち着くまでしばらく

好きなようにさせた



「ヒクッ・・・クッ・・・」





泣きじゃくる姿はまるで子供のようだな・・・(苦笑)

酒の力も相まって素に近い・・・

帰れるか?家まで・・・



「リーダー、家帰れる?送ろうか?」


「いい、帰れる・・・」



急に酔いが回ってきたのか呂律が妖しい・・・

大丈夫・・・じゃないよね、



「タクシー呼ぶから、近くまで送る、行くよ、立てる?」


「いいてっば・・・一人でけぇれるから・・・待ってる・・だ」



今にも目がくっつきそうな状態で、いくら無理だって

言っても、聞かない・・・



「・・・待ってる・・・だ」


「えっ、なに?」


「・・・・翔・・・くんが・・・ってる」















リーダー・・・大野さん、


そうだよ・・・待ってるんだよ

そこで翔さんはずっと待ってる、

あなたが戻ってくるのをずっと・・・





とりあえず、すぐにでも眠ってしまいそうなリーダーを

揺すり起こし車に押し込む

その隣に乗り込み再度リーダーに帰る場所を確認する

リーダーが呂律の回らない口調でタクシーにその場所を伝える・・・



「えっ?・・・・!!!!」




俺は、黙って・・・

走り出したタクシーの窓に映るリーダーの

幸せそうな寝顔を眺めていた・・・