昼間なのに薄暗い部屋の中で時間をつぶす




過密スケジュールで

自分を追い詰めていたころに比べれば

無駄な時間の使い方をだいぶ覚えてきた


何も考えないでいることが恐い時期


今想い返せば智くんのことを考えないように

していたんじゃないか?とさえ思うようになった



なぜなら・・・


今、俺は智くんのこと以外考えられないでいるから







寝ても覚めても・・・とはよく言ったものだ

言葉通り寝ても覚めてもあなたがいる

俺の家は智くん・・・あなたで埋め尽くされている

そこかしこにあなたを思い出す

あなたがいなければ用を足さない物たちが

俺の言葉を黙って聞いている

あなたを思いそれに触れれば

あなたからの想いが流れ込んでくるような気がして


・・・返せないでいる









帰りを一緒に待っていたい

そう思っているのだが・・・・

今、それさえも自信がなくなってきている






忘れたくなるほどつらい記憶だったのかと・・・






突然、鳴るインターホンの音に

心躍る・・・

もしかして・・・






確認せずに、ロックを解除する

玄関の前で立ち尽くし

来るはずのない人の面影を

期待してしまう・・・

チャイムが鳴り

聞こえてきたのは



『翔さん・・・俺、松本・・・』





あぁ、そうだよ・・・な


分かってはいたが・・・やっぱり


こたえるな・・・・



「どうぞ・・・」


ドアが開くのが速かったせいか

驚く松潤・・・


「ゴメン。突然・・・」



「どうした?珍しいな・・・」


松潤をリビングに通して座らせる



「翔さん・・・単刀直入に言うよ」


少し落ち着きなくソワソワしながら

それでも言葉を選びながら何かを伝えようとしてくれる

松潤に・・・自然と笑みがこぼれる






「コーヒー飲むか?」


「えっ?あぁ・・・」


返事は待たずキッチンへ向かう俺に何も言えないでいる松潤


無言のままコーヒーをおとし始めた






     ~~~あぁ、いい匂いだな・・・





どこかでんそんな声がした気がした

智くんがコーヒーを入れるたびそんなことを言っていたっけ・・・


ふふっ・・・

なぜこんな時笑ってしまうのだろう?

真逆の反応を心が示す

奇妙な顔つきで俺を見ている松潤の視線

ナゼワラッテイラレル?

そう言われている気がした


分かっているさ、何を話に来てくれたかだって

信じたくないだけで・・・

どこかで確信していたんだ、きっと

あまりにも普通すぎる智くんの中に

・・・・・俺の姿がないことを



「悪い、カップだけでいか?受け皿はなしだ」


「あぁ、サンキュウ・・・」



静かにコーヒーを口にする



今日のコーヒーは苦みがやけに強く感じる

いつもと変わらないはずなのに・・・



「で、話って・・・なに?」



ピクリと松潤の肩が動く・・・


「・・・大野さんのことなんだ・・・」


そして、静かに話し出した


トクン と鼓動が走り出す・・・・・