
「さ、智くん!!!いるの?」
慌てて脱ぎ捨てた靴が明後日の方角に
飛んでいく・・・
返事のない静まり返った部屋の中に
一人立ち尽くす
「・・・・・・やっぱりいないか。」
帰ってきてないんだ
あの格好のままどこに行ったんだろう
智くんの家の鍵・・・ここに置いたまま
すぐにでも探しに行きたいのに
もしかしたら帰ってくるかもしれない
そんな淡い期待を捨てきれないでいる
ブーッ、ブーッ
着信を知らせる振動
智くん!?
急いで出るがそれは事務所からだった
『・・・・・・・大野がタクシーに忘れ物をしたが
連絡が取れないので代わりに受け取りに来い!
と社長からの伝言です・・・』
社長?ジャニーさん?
なんでこんな時に?俺に?
早く探しに行きたいのに(怒)
「今じゃ無きゃダメですか?俺これから出かけるんですが」
『・・・すみません本日中にとのことです』
本日中って・・・
社長の命令は絶対か・・・
「わかりました。じゃぁ、後ほど伺うとお伝えください」
なんだって俺に?
ん?・・・大野の忘れもの?
智くんの忘れものを
なんでジャニーさんが?
もう一度だけ智くんに電話をかけてみたが
やはり電源が入っていない
仕方なく事務所に、ジャニーさんのところに
その忘れ物を受け取りに向かった
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「その格好でここまで来たの?」
目をまん丸にして俺を見下ろす・・・・
でも、優しい眼差し
きっと俺に同情してるんだろうな
女々しい俺に・・・
「ははっ、そのまま来ちゃった」
「寒かっただろうに、早く入ってあったまって」
部屋の中へと促す姿勢がカッコいい
こういうところがジェントルマンなんだよな
エスコートし慣れてる・・・フフッ
「なに?何で笑うの?」
「えっ?笑ってなんかないよ」
「まぁ、泣かれるよりいいけど(笑)」
・・・チェッ、何でもお見通しってか?
「フッ、口尖らせない。子供みたいだな、何歳になっても」
「うっさい!」

リビングの奥のソファーに
腰かける
身体がすっぽり
収まる感覚が
自分の家のソファーに
似ていて
眠気を誘う
一気に疲労感が押し寄せてくる
ほんのり漂ってくる
甘い馨りが疲れた体に心地いい
たまらなく瞼を閉じた
どの位たったろう
遠くで俺を呼ぶ声がした
翔くん?・・・・
「・・・しょう・・くん・・・」
「・・・・・・・・・・・。」
冷えた体を温めようと
入れた熱々のココア・・・
「フフッ、飲む前に撃沈か・・・・」

それにしても・・・・翔さん、アンタ今度は何したんだ?
なんで泣きながらアンタの名前呼ばせるの?
泣かせることするなら
遠慮しないって言ったよね
こうして俺を頼ってきた
アンタを思って眠りながら泣いてる
大野さんだけど今度は返さないから
きちんと整理が付くまでは
ここにいさせるから
翔さん・・・・今度は手加減なしだ