せっかくの式に水を差してしまったかな?

ごめん、顔を見せるつもりはなかったんだ



でも、幸せそうで・・・本当によかった



俺、自覚なかったんだけど

彼女に声をかけたときにはもう、泣いていたらしくて

その顔が彼女曰く尋常じゃないくらいに

悲愴的で何も聞かなくても翔くんのせいって

思ったらしい







そう・・・俺にこんな顔させるのは

翔くんしかいない





こんな俺でも幸せになれるのかな?



幸せってなんだろう?


何が幸せなんだろう・・・・


好きな人と同じ時間を過ごせること?

同じ夢を見続けられること?



ううん・・・

何よりも、翔くんとずっと一緒にいたい


そう思う気もち

それが今の俺の幸せ

そう思えるのって一人だけなんだ

だから、形で残したかった

『証』が欲しかった


同じ気持ちでいてくれるのなら

受け取ってもらえるのかな?

なんて、安易に考えすぎてたようだね・・・


俺は、男だからって枠で

翔くんを考えたことはなかった

気が付いたら自然と好きになっていたから

もちろん、最初は戸惑ったよ

俺おかしいのかも?って真剣に考えたから


でも自分に素直でありたい

そう思った

だから隠す必要もないし聞かれれば

好きだと周りにも言い続けてきた

それをどうとるかは別として・・・・



だけど・・・それは俺だけの場合

翔くんは、俺なんかとは別世界で

仕事をすることが多いしそこには

必ず『常識』が存在する

俺の想いはその枠から大きく外れる

それにかかわる事は

すなわち、その地位自体が危うくなるってこと

そんなことで仕事に影響を与えたくはない

なら、別の選択をすればいいこと


それができていたらとっくにしてるけど・・・



「マジ、考え時?なのかな・・・・」


携帯をだし電話をする



「もしもし、俺。そっち行ってもいい?」



『なに?翔さんとなんかあった(笑)?』


「・・・別に。ないけど、ダメならいいよ」


『ふっ、あなたならいつでも大歓迎だよ。待ってる』




俺は大事な居場所に背を向けて

逃げ出すようにタクシーに乗り込んだ



そして、ポケットから取り出した箱を

シートの上にそっと置いた・・・・・