sho to satoshi vol.10



「ただいま・・・・・。」



いるわけないか・・・


ふぅ~


ネクタイを緩めワイシャツの袖のボタンを外す


疲れがどっと押し寄せてくる・・・・



腫れた頬を水でぬらしながらひとり呟く



「こんなもんか・・・俺ってこんなに薄情だったか?」



今の今まで自分は他に引けを取らないくらい紳士的と


思っていたが・・・



実際は・・・・「鬼だな、俺。」



つい今しがた、くらった顔面パンチ。いや、正確には顔面カバン?。


上手くよければいいのに


そうしたくなかった俺がいて・・・


思い切り口の中も切った。



それだけ、本気だったってことだよな・・・・



ゴメン。


俺の彼女は何でも自分が一番じゃないと気が済まない


だからなのか、自分は二番目じゃいや!とよく言っていた



意味がわからなかった。


今日・・・



言われたんだ。


『あなたの中に一番目がいる、私よりもその一番目の方が大事?』


と・・・・


何のことだかわからなった



俺の彼女は目の前の一人だけで、他の女に触れたこともない


当然、会えば俺も、男だからその・・・・もよおすわけで


今日も記念日にと予約を入れたホテルへ行った


一連の行為に及びいざ、というときに


彼女の態度が急変する



気が触れたかのように俺をののしる・・・


落ち着かせようと彼女に触れた瞬間



首すじを指さされ、薄紫の痕の説明を

求められた・・・・



「あっ!・・・・・。」


とっさに手で隠す仕草が気に入らなかったのか



スローモーションのように


飛んできた彼女のカバンが俺の頬を直撃する・・・



しばらく傷みに打ちひしがれて気が付くと



彼女が一人部屋を出ていった後だった



しばし呆然と呆けていたが


不思議と冷静な自分がいた



当たり前の結果だと・・・・・俺が全て引き起こしたこと



きっかけはこの首筋の痕だったかもしれないが


それ以前に、彼女を不安にさせていた自分がいたことを


俺自身が認めていた



彼女は俺にとって申し分のない子だったと思う



でも、俺の求めていたものではなかったんだと


そう思った・・・


じゃぁ、俺の求めているもの?って・・・・


って、思った時


なぜだか智くんの顔が浮かんだ


それから・・・ずっと消えないんだ


気でも触れたかと思うくらいにずっと頭から


離れないんだ


心の奥に淡い炎がともったように



それは俺の心を温かくする・・・・


思うだけで優しくなれる。


男なのに・・・おかしいよな。


傍にいたいって思うんだ、智くんの笑った顔を


いつも見ていたいって・・・・


伝えたら・・・・智くんはどう思うのだろう?



軽蔑するかな?俺を・・・・


会いたいな・・・・