
急げ!
急いでくれ!
頼む、もっと速く走ってくれ・・・
心の中で、叫びながら
マンションまでたどり着く
挨拶もそこそこに、走り出して智君の部屋の前までくる。
カギはまだ持ってるが
さすがに使えない。
インターホンを押す。
緊張が走る・・・・・
「・・・・・・。」
ピンポーン
「・・・・・・・?。」
あれ?いない
えっ、もしかして出先からだったの?
もう一度、メールを見てみる。
んあぁ~~~じれったい!上手く操作できない
落ち着け俺!!!
『・・・・会いたい。帰り待ってるから・・・・』
!!!
俺んち?
もしかして・・・俺んちにいるの?
くそっ!
息を整える間もなく、通りに走り出し
タクシーを見つけるが・・・・・
なかなか来ない。
あれから一時間以上経過している・・・・
智くんは、まだ待っていてくれてるだろうか?
そうだ、電話、
呼び出し音がなる・・・
一回・・・二回・・・、三回・・・
『・・・・もしもし、』
「あっ、さ・・・智くん?」
『・・・・翔くん・・・メール』
「ねぇ、今どこ??」
『えっ、・・・・翔くん家から・・今ちょうど・・』
「すぐ行くから、待ってて!!!」
必死で探すも、タクシーが来ない・・・・
焦りが、だんだん倍増してきた。
「・・・ん?」
スマホが震える。
『 翔くん、もし俺ん家だったら、中でまってて。いまタクシーの中 』
智君・・・
急に身体中の力が抜けるのと同時に
すれちがう人の目が気になりだした
さすがにここでは待てない・・・・
もう一度智君の部屋の前まで行くと・・・
言いようのない不安があふれ出してくる

会いたいって言ってもいろいろな意味があるし・・・
もしかしたら期待していない結果かもしれない
このまま会わずに帰った方がいいのかも・・・
グルグルとマイナス思考が頭を巡る
ホント、俺ってヘタレだな・・・・・
「中で待っててって・・・」
さすがに入りづらいよな、幸い通路を歩く人影はまばらで
中に入る勇気もなく通路の手すりによりかかり
夜の街並みをしばらく眺めていた
「こんなに綺麗だったけ?ここからの眺め・・・」
東京でも、智くんは少し奥まった場所に住んでいて
緑がまだあちこちにあって・・・
よくデッサン描いてたっけ・・・・・
・・・・・俺、会っていいんだろうか。
また疑問符が頭をもたげてくる・・・・・
日付はとっくに変わっている、遅すぎる時間を
気にしつつ・・・智くんの帰りを待つ。が、
長い・・・・
永遠にこない人を待っているって、こんな感じなのかな・・・
智くん・・・俺、会っていいのかな?
こんな中途半端な気持ちで
会っていいのかな?
智くん・・・・・
不安は確実に広がってこの場を離れないと
そう思うようになっていた
