
智くんから鍵を返されて
どれくらい経っただろう?その時の俺は
そのことが受け入れられずにいて・・・
攻める言葉しか出てこなかった。
あなたの心の中まで
見据える余裕が無かったから
今思えば、あの時どれだけ
あなたを傷つけていたか
それでも何も言わないあなたに疲れ果て
実質的にはもうこの関係自体
なかったことにしようとして
握りしめていた鍵を
奪う形で終わらせてしまった。
握りしめていたんだ・・・
赤く跡が残るほど・・・
それがどういう事なのか、
その時の俺には分からなかったんだ・・・
あなたの癖は、すべて把握していたつもりで
この時もちゃんとあなたを見ていればわかったことだったんだ
納得するまで周りが何を言っても考えを変えない人だって
その理由さえ聞こうとしなかった
・・・・一人になりたい
その言葉の意味を理解できないまま
あなたを手放してしまった
あなたの家に潤が初めて遊びにいった時の事を
面白おかしく話していたのを
内心煮えくり返るほどの想いで聞いていたんだ

・・・・・そんな事俺が一番知ってるって。
”始めて家にあげた芸能人”って
あなたの口から出たとき、頭の中が真っ白になった
その時気づいたんだ。
俺は堂々と表に出ることのできない人間なんだって
その晩俺は酒浸りで酔ったままあなたの部屋のドアをたたいた
俺はまだあなたの鍵を持っていたから
開けようと思えば出来たんだ
だけどそうしたくなかった。悔しかったから
インターホン越しに聞こえてきたあなたの声は
少しはずんで聞こえた。
でも、中に入れてはくれなくて
それが無性に腹立たしくて・・・・
それでも思いは止まらなくて、無理やりキスしたんだ
長いキスだった・・・・泪の味になるまで気が付かなったんだ
泣いてることに・・・
どっちの泪だったんだろう
俺は逃げるように帰ったんだ
皮肉にも次の日は潤と一緒の仕事。
重い身体を引きづって洗面台へいって
愕然とした。
首筋に薄らと紅い印
・・・・えっ?なんで?
智く・・・ん・・・
昨日・・・唇を離したた後一瞬抱きしめられたような・・・
気のせいじゃなかった・・んだ・・
「智くん・・・」
泪が後からあとから、溢れて止まらなかった。

